水虫の恐怖、再び…
蒸れた足を放置し、お風呂に入らない。
不衛生な生活を送った結果、水虫持ちとなる。
水虫=不潔
そんなイメージを持っていた私は7年前、水虫持ちとなった…
しかも、足ではなくお尻に奴らの巣窟は突如出現したのである。
7年前。
夏のとある日。
床に置いたクッションに座り呑気に録画した番組を見ていた。
すると急に、尾てい骨付近(お尻の割れ始め部分)に猛烈な痒みが発生した。
部屋に一人だったが、さすがにお尻付近を直接掻くのはためらいがあったため、
服の上から軽く掻いてはみたが痒みが治まるどころか悪化する一方。
こりゃ、やぶ蚊か? いや、この痒みはダニか?
などと思い、座っていたクッションに住んでいるダニの仕業だと判断した私は、
常備している痒み止めを綿棒に付けてそっと患部に塗ってみた。
これで痒みも落ち着くだろうと思いダニの住処になっているであろう
クッションを直射日光のあたる窓辺に置きバランスボールに座って録画番組を
見始めた、が集中できない。
か、痒い。
お尻付近だとか言ってられない。
今度は直接痒みのある尾てい骨を指先でがっしがしと掻いてみた。
しかし、痒みは治まらない。
猛烈な痒みに恐怖を感じ、
恐る恐る鏡の前に立ちズボンとパンツをそっと下ろした。
すると…
お尻の割れ始め部分に全長3cmほどの横長で歪に膨らんだ濃く赤黒い皮膚が
確認できた。
これは、蚊でもダニでもない。
30数年生きてきた中で見た事もない虫刺され。
助けを求めに皮膚科へGo。
と思ったが、休日でしかもお尻の割れ目。
ほのかな羞恥心が邪魔をして、
よし、薬局で塗り薬を調達し自力で治そう!
早速ステロイド配合の塗り薬を手に入れ、
添付文書の指示に忠実に従い、一日に数回患部に黙々と薬を塗り込んだ。
しかし、
3日、4日経過しても痒みが治まる気配はない。
むしろ患部の歪な膨らみは成長している。
ステロイド配合=最強と思っていた私。
添付文書に見落としがあるかも!?と再度熟読すると、
「5~6日使用しても症状がよくならない場合は、この添付文書を持って医師、
薬剤師に相談を…」と書いてある。
タイムリミットはあと1日。
寝る前にいつもより多めに薬を患部に塗り込み、
どうか次の日には治ってくれ!と祈る気持ちで眠りについた。
翌日の早朝、猛烈な痒みによってその祈りは打ち砕かれ、
私は添付文書を握り締め、皮膚科へと向う事となる。
皮膚を剥ぎ取りたくなるほどの猛烈な痒みを治してほしい。
そんな思いから医師にステロイド剤と共に戦った旨を熱く伝えると、
事の経緯を知った医師は私にベッドにうつ伏せになるよう促した。
促されるままベッドにうつ伏せになると同時に、
躊躇なくお尻をプリっと出した自分の羞恥心レベルっていったい…
患部を診た医師は、
「あー、これは…」と言いながらお尻の割れ始め部から皮膚を採取し、
顕微鏡で観察しながら「あー、やっぱり水虫だー」と、
想像もしていなかった答えを導き出した。
み、水虫? あの、足が痒くてジュクジュクするやつ?
え? 私の尻に何故?
毎日、しっかりお風呂に入ってるし…きれいにしているはずの私の尻に?
などと、心の中でパニックになっている私を見て医師は「足も見せて」と、
今度は私の足を観察し始めた。
「ん-、足は大丈夫だね」
とは言われたが、安心するどころか脳内パニックは治まらない。
尻に水虫菌。足ならまだしも、尻…って。
奴らはいったいどこから?
…
…
…!
私の周りにいる水虫菌保有者はただ一人。
同居する父のみ。
70代の父は私が生まれる前から水虫菌と共に生活していたらしく、
物心ついた時から家では使いかけの水虫薬がどこかしらに置かれていた。
そんな父が体調を崩し、看病する中で足の爪が白く分厚くなっていたため、
皮膚科に連れて行き処方された薬を使い捨て手袋をして毎日せっせと
塗り込んでいた。
父の足に薬を塗ってからお風呂に入っていたのに、迂闊だった…
そういえば、健康診断の血液検査の結果で免疫が落ちてるって書いてあったな…
水虫菌とともに成長した私でもさすがに免疫が落ちてたら奴らには勝てないか…
などと密かに落ち込んでいた私に医師が、
「水虫菌にステロイドは餌をあげてるようなもんだよー」とトドメの一撃を
放った後、抗真菌薬なる薬を授けてくれた。
あれから数年が経ち、私のお尻の割れ始め部分は健やかな皮膚を手に入れた。
だが、先日胸の谷間にあの猛烈な痒みとブツブツとした膨らみが発生した…
汗が溜まりやすい胸元にメンズ用の汗拭きシートを忍ばせ過ごしていた矢先。
7年前の悪夢再び。
今回は患部になにも塗らず、迷うことなく皮膚科へ向かう事にしよう…