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第九話

 夜会を終えて自宅に戻ったイングリッド・ウェントワース男爵令嬢は、ため息を吐いた。

 素晴らしい夜だった。

 自宅まで送ってくれた男爵令息は、見た目はそこそこだがエスコートはスマートだし、なにより金回りが良い。


「自分で稼げる男性って素敵」


 イングリッドは自分で髪飾りを外し、髪をほどきながらつぶやいた。

 ウェントワース男爵家は名前こそ立派であるが、金がない。

 だからイングリッドは、身の回りのことは一通り自分でできる。

 それは両親にも言えることだった。


 皆が褒めた、高く結い上げるタイプのハーフアップは母の作品だ。

 最近の流行りではない髪型なのだが、やっている令嬢が少ないだけにとても目立つ。

 より華やかに見えるタイプのハーフアップは、流行遅れであることを感じさせることがない。

 なにより、その派手な髪型はイングリッドに似合っていた。


「怪我の功名ってヤツよね」


 母が身に着けた技術が娘を助ける。

 素晴らしい循環だと、イングリッドは思った。

 もちろん稼ぐ力に乏しい父も、彼女にとっては愛すべき家族だ。

 ひとりっ子であるイングリッドは、家族も含めて幸せになることを願っている。


「そのためには、お金持ちの令息と結婚しないと」


 金を持っていて、自分や自分の両親にも惜しみなく援助をしてくれる男性。

 それがイングリッドの理想だった。


 今夜知り合った男爵令息は、その願いを叶えてくれるだろうか?


 イングリッドの感触では、だいぶ理想に近いように思えたが、実際のところは分からない。


「いずれにせよ、私が一番高く売れるタイミングで最良の男性と一緒になるのが一番よね」


 髪飾りの横にイヤリングやネックレスを並べながら、彼女はつぶやく。

 このアクセサリーやドレスは、十分に役割を果たしてくれたと思う。

 だが、これを贈ってくれた男性はダメだ。

 いくら財産のある家の跡取りであっても、自分で使えるお金とイングリッドに貢げるお金のない男性に興味はない。


「自分で稼げない男性は魅力がないわ」


 イングリッドはアクセサリーを手入れしながら、これは売るべきか保管しておくべきか、どちらが得なのかを考えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 賢いよね。 頭の悪い男と付き合うのは時間の無駄 こういうタイプは野生の勘が働いて、男の切り時を間違えないものだけど、物語だから伯爵家の坊っちゃんと一緒に破滅するかな?
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