③生徒会長のカオル先輩が隠れ巨乳だなんて聞いてない。
放課後、俺はいつものように生徒会室へ向かった。
何を隠そう、俺は生徒会役員なのである。ちなみに会計だ。
特段運動が得意なわけでもない俺は運動系の部活に所属しようという気概がなく、かといって文化系の部活にも惹かれなかった。
何か人と違うことがしたい、という気持ちが強く、そんな俺を満足させてくれたのが生徒会である。
「お疲れさまでーす」
無遠慮に生徒会に入ると、そこには生徒会長である秋葉カオル先輩がいた。
「夏目くん、お疲れ様」
カオル先輩は色素の薄いショートヘアをサラリと揺らし、眼鏡を押し上げた。
「特に用事がなくても、夏目くんは毎日生徒会室にくるのだな。感心だ」
「カオル先輩だって毎日いるじゃないですか」
「まあ、私はこの学校でここが一番好きな場所なんだ」
「俺もですよ」
カオル先輩は嬉しそうに微笑み、すぐに手元の書類に目を向け始めた。
特にすることがない俺は、過去の生徒総会の資料を整理しようと棚に手を伸ばした。
「そうだ、夏目くん。過去の資料をスキャンして、PDFにしておいてくれないか?」
「わかりました」
「確か2020年まではやってあったと思ったのだが…」
俺の真横に並んだカオル先輩は、高い位置にある資料に手を伸ばそうとした。
カオル先輩が背伸びをすると整ったご尊顔が近くなり、俺は思わずまじまじと見てしまう。
「俺が取りますよ」
「いや、もう届きそうだが…わあっ!」
カオル先輩がファイルを取り出した瞬間、黒い小さなものがカオル先輩の胸元にポトリと落ちた。
蜘蛛である。
「いやっ、いやぁあ!夏目くん、取って」
カオル先輩が悲鳴を上げ、身を捩る。ベストを慌てて脱ぐが、すでに蜘蛛はシャツの下へと潜り込んでいた。
「カオル先輩、落ち着いて下さい!」
「シャツの中に入ったかもしれないっ!」
いつもはきっちり上まで留められているボタンが、カオル先輩自身の手によってどんどん外されていく。
俺は思わず、生唾を飲んだ。カオル先輩の豊満な胸が眼前にさらけ出されたからである。
いつもはベストを着ていてわかりにくかったが、カオル先輩はかなりの巨乳であった。見るからに柔らかそうで真っ白なそれは、圧倒的な質量を見せ付けている。
しかも、ブラジャーは薄いピンク。
いつも男勝りなカオル先輩の性格とのギャップに、俺は興奮さぜるをえなかった。
「夏目くん、取ってくれっ…!蜘蛛は苦手で触れないんだ!」
「えっ!?俺がですか!?」
「はやくっ…!谷間のところに入ったかもしれないんだ」
俺は震えながら、2つの禁断の果実の間に手を差し込んだ。
ふにゅん。
少し汗ばんだそれは温かくて、水風船のような感触であった。
あ、だめだ、勃起不可避。
思いっきり胸を揉みしだきたい衝動にかられた瞬間、俺の後頭部に衝撃が走った。
「痛っ!!」
資料が入っているファイルが見事俺にクリーンヒット。
ちょうど、蜘蛛が床に逃げていく様子も見えた。
「だ、大丈夫か夏目くん!」
「大丈夫です…」
ある意味、助かったのかもしれない。
カオル先輩も我に返ったようで、慌てて制服を着直していた。
「すまん、見苦しいものを…」
「いえ」
最高でした。
そう言おうとしたが、我慢をした。
その日の夜、俺はベッドで横になりながら今日の出来事を噛み締めていた。
マリアの尻に始まり、カオル先輩の胸に終わる一日。この右手は幸せで溢れていて、本当は風呂で洗いたくなかったくらいである。
「今日はなんてラッキーだったんだ…」
ぼそりと呟いた瞬間、俺は今朝の夢のことを思い出した。
『特別な力だよ。この力を使って、願いを叶えてね』
突然頭の中に雷が落ちたかのような衝撃が走り、俺は飛び起きた。
まさか、まさか。
「ラッキースケベってやつか…?」
天使からの誕生日プレゼントが、ラッキースケベ?
しかもそれを使って、願いを叶えるだと?
俺の願いは…。
「ラッキースケベを使って、彼女を作るのか!?」
思わず口から飛び出した雄叫びは、喜びか、はたまたそんなのは無理だという心の声か。
斯くして俺は、意図しない特殊スキルを手に入れたのであった。