①天使から誕生日プレゼントが貰えるなんて聞いてない。
俺の名前は夏目凛太郎。
どこにでもいる普通の高校生だ。何をもって普通というラベルを貼るかはわからないが、女子にモテたいしあわよくば彼女が欲しい…四六時中そんなことを考えている、ごく一般的な男子高校生である。
ちょっとスカしたところがあると自覚はあるが、これが格好いいと思って生きてきたから、今更変えられない。ちょっとスカしているほうがモテないかな。気のせいかな。
そんな俺は、明日誕生日を迎える。この世に生まれ落ちて16年目になる。今年こそは彼女を作るぞ!と意気込み、21時には布団に入って寝た。
その晩、俺は夢を見た。
俺はふかふかの雲の上に座っており、青空の中にいた。キョロキョロと周囲を見回していると、1人の少女が近づいてきた。
その少女は長い白色の髪をなびかせ、深い海のような青い瞳をキラキラ輝かせていた。純白のワンピースが似合っているが、なぜか背中には、大きな白い羽がついてる。
え、まさか天使?
「お誕生日おめでとう!」
天使は小さな白い箱を俺に渡してきた。
「あ、ありがとう…?」
「開けてみて。あなたがすごく喜ぶ物だよ」
はやく、と催促され、俺はその白い箱を開けた。
その瞬間、金色の光の粒が箱から飛び出し、俺にふりかかった。
「わっ、な、なんだ!?」
「特別な力だよ。この力を使って、願いを叶えてね」
「特別な力って…?」
「もしあなたの願いが叶わなかったら、来年のお誕生日には返して貰うからねーっ」
「俺の願い?なんなんだ?」
「あ、その力、反動があるから気をつけてね!」
会話のキャッチボールが許されない。
詳しい説明も何もせず、天使は手を振りながら去っていった。
「ばいばーいっ」
天使が振り返ったその瞬間、ワンピースの裾が翻り、ワンピースと同じ純白のパンツが見えた。
「天使はパンツも白なんだ…」
そう呟いた瞬間、俺は目覚まし時計のけたたましい音で現実に引き戻された。
「…夢か」
カラカラに乾いた喉からは、掠れた声しかでなかった。
目覚まし時計を止め、体を起こす。寝起きのはずなのに、やけに頭は冴えていた。
「特別な力ってなんだろう」
壁に向かって勢いよく拳を突き出してみる。火が出るわけでもなく、力が倍になったような感覚もない。
とりあえずジャンプしてみる。跳躍力が上がったわけでもなく、空も飛べそうにない。
念じてみたが、近くにある物は何一つ動かない。サイコキネシスでもないのか。
「…夢だよなぁ」
一人でぶつぶつと喋りながら、俺は高校に行く支度をした。
両親はすでに出勤しており、家には飼い猫であるねぎとろしかいなかった。
「ねぎとろ、おはよう」
ねぎとろはソファの上に寝転んでおり、片目だけ開けて俺を確認すると、再び目を閉じて眠る体勢に入った。
用意されている朝食を食べ、身支度を終えた俺は家を後にした。
まだ6月の下旬であるが、外は真夏と錯覚するほど暑かった。