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第三話

お料理の話。

「人間に化けたナマコを誰が食べるとでも!?」

 真っ当なツッコミだと思う。

「てかあなた、どこから入ってきたのよ」

「他の魚がいっぱいあるところ。みんな腹から血を出して助けて助けてって叫んでて。怖くなって逃げたの」

「……あー、もしかして台所? えっと葉っぱとか置いてなかった? あとその仲間?の魚が盛り付けられてたり」

「してた!」

 どうやら本当に食用らしい。

「んで、おまえはだあれ?」

「おまえって失礼ね。私は山田花子」

「花子よろしく!」

「よ、よろしく……ねぇエクレア」

「なあに?」

「服を着て」

 近くにあったバスローブらしきものを渡す。すると器用にエクレアは着こなした。本当にナマコ?

「なんであなた人間になれるの? てか本当にナマコなの?」

「ナマコだよ。なんかね、人間って大きいし陸の上でも生きられるからかっこいいなって。それでなんか頑張ったらなれちゃった」

「なんかってなによ。そもそもナマコがそんなに頭が良かったなんて知らなかったわ」

「われはね偉大なるナマコだから」

「は?」

 思わず口からこぼれ落ちてしまった。

「勉強できるすごいナマコなの。こういうの、人間の言葉で突然変異って言うんだよね?!」

 彼女はどこまで知っているのだろう。どこまで学び、何をもってして人間への憧れ、そして情熱が続くのだろうか。

「まぁそうね。言葉通りなら。とりあえずここから出ない? あーヌメヌメはよして。床が濡れちゃうから」

 エクレアの手をひきながら一旦風呂場を後にする。

 すると、コンコンと扉をノックする声が聞こえてきた。

「勇者様、お食事をお持ちしました」

 隣でキョトンとした顔で突っ立っているエクレアに、ベッドの下に隠れるよう指示をする。

「どうぞ」

 返事を返すと、失礼しますとメイドが入ってきた。

 運ばれてきた食事は続々と白いテーブルに並べられる。

「お酒は飲まれますか?」

 メイドがワインボトルを持ちながら聞いてきた。

「いえ、飲めないので……」

 たとえ日本の法律が異世界では全く無意味だったとしても、体の健康のため厳守する。

「でしたらこちらの果実水にしますね」

 ワイングラスに注がれる薄オレンジ色の液体。柑橘系かな、だとしたら大好物だ。

 ずらりと並んだ料理。

 メインは鳥っぽいステーキで、コーンスープっぽい何か、パン、サラダ、シャーベット、フルーツらしき何かだった。なるほどフルコースと来たか。

「ゆっくりお召し上がりください」

 私はあるものが足りないことに気が付く。カトラリーは十分あるし、わざわざ箸をよこせなど言わない。ただ必要なのは一つのみ。

「あのー、タバスコってあります?」

「はい? それはどういったものでしょう」

 くっ、この世界にタバスコは存在しないのか?

「じゃぁチリソースは?」

「存じ上げないものですので、料理長に聞いてきますね」

「あー、ならえっと上からかける辛いソースってあります? できれば激辛のやつ」

 あぁ、メイドの私を見る目が変わった。なんだこいつって絶対に思われてる。なんなら若干引かれてる。それもそうだよね、完璧な彫刻品の上からチョコレートソースをかけろと言っているようなものだよね。

 でもそれがないと生きてけないんだ。

「か、確認してまいります!」

 バタンと扉がしまった。ドタドタと忙しない音が壁越しに聞こえてくる。

 待っている間果実水を飲んだ。オレンジフレーバーにミントが入った爽やかな味わい。なるほどさっぱりしていて、肉料理にはよく合うことだろう。

 赤黒い色をしたソースが入った大きめの便を、メイドが持ってきてくれた。いかにも辛そうだ、実にいい。メイドはなぜあんなものをかけるのかと訝しげな顔をしたまま廊下に消えていった。

「それ食べ物にかけるの?」

 ベッドの下から戻ってきたエクレアが尋ねる。

「そう。多分きっとすごっく辛い。だがそれがいい痺れる辛さ、痛いと喚く舌、喉。最高だね」

 ふと疑問に思ったことを口にする。

「そういえばエクレアは何を食べるの?

「プランクトン」

「そこはちゃんとナマコなんだ」

 エクレアがじっと見ている間、片っ端からドバドバとソースをかけていく。シャーベットもフルーツも例外ではない。メープルシロップをホットケーキにかける勢いだ。

 全体が酷い惨状に早変わりした料理をいただく。

 直後襲いかかる辛さ!

 どこぞの髑髏マークがついたソースよりもやや辛い。ちょっと物足りないが次第点だ。

 いくら辛くても、元の料理が良いおかげで、肉の旨みを感じることができる。サラダはシャッキシャキだし、スープは具材がいい感じに溶けていて美味しい。

 心の中で料理長に謝っておこう。

 あぁ汗が滝のように流れる。体が暑い、熱い。舌がピリピリしてきた。喉なんてとっくに痛いし、息が上がっている。

 だがそれがいい。

 先に行っておくがMではない。どちらかといえば私はSだ。

 ただ辛いものに目がないだけで。

中の人は辛いの食べれません。カレーは甘口オンリー。

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