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第一話

平凡から抜け出したい少女の話です。

 私は物申したい。


 山田花子はとても物申したい。


「平凡飽きた!」と。


 書類に名前を書くとき、例として田中に山田、太郎に花子の名前を一度は見たことがあるだろう。

 日本人にとっては馴染み深い名前だから使われているらしい。いまだに。

 そんな日本に、準日本人として生まれた私の名前は山田花子。


 典型的なおかっぱ頭に赤いランドセルだった小学生時代、メガネをかけたロングストレートでセーラーの中学生時代、垢抜けに失敗している高校生の今。


 名前通りの平凡で平均で一般的な人生を謳歌してきた。

 正直、人生に飽き飽きしている。

 平凡から逃れようとしてきた。オタク道に走ってみたり、茶道を習ってみたり。


 どう足掻いても、何をやっても平均くらいしかできない。

 中肉中背の体、平均身長、平均体重。そして顔は決してよくない。

 以外と平均顔というのは美人に分類される。

 まぁそれが平均かと言われれば、嘘だといいたいが。


 もはや呪いである。


 名前の呪い。


 みんなが山田花子という名前が日本人の平均的なものだと信じているせいだろうか。

 そのせいで、すべてが平均になる呪い。たまったものじゃない。はっきり言ってくそくらえだ。

 ならばいっそのこと異世界にでも行きたい。

 異世界といえば外国の名前が多いし、山田花子なんて珍しいってなる。

 もしかしたらキラキラネームなんて言われてしまうかもしれなが、このさいどうでもいい。


 スマホを見ながらベッドでダラダラしている今、遠くでは誰かが夢に向かって、バイトをしている。もしかしたら隣のマンションの工事で働いている人がそうなのかもしれない。


 だけど、私にはそんな度量も気力も持ち合わせてはいない。ただ流れるがままに生きている。

 どうにかしたいと頭では考えても、体はかってに動いてくれないのだ。


「花子ー、昼ごはーん!」


 お母さんの声が階段下から聞こえてきた。


「今行くー」


 スマホを充電器に挿して、伸びをする。ベッドから降りてダラダラとした足取りで扉を開け、廊下に出る。


「へ?」


 廊下に出たはずなのに、見渡す限りヨーロッパみたいな城の中みたいな、いや教会かな。まぁいいけど。そんな不思議な空間のど真ん中に出た。周りには変なコスプレをした人たちに囲まれている。


 これは夢? それとも幻覚?


 もしかして、スマホを見ながら寝てしまったのだろうか。思いっきり頬をつねるが痛い。ヒリヒリする。やけに音は鮮明だし、清楚な空気の匂いを感じる。

 夢ならばここまではっきりとはしないだろう。

 口角がややあがる。けど足はがくがく震えている。


「ようこそ異世界の者。我が国の勇者よ」


 真ん中にいた白い髭の長い老人が私に話しかけた。


 あぁさよなら私の平凡。


 ついに異世界召喚されたみたいです。

誤字脱字あれば教えてください。

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