第8話
採血を済ませ、簡易的な検査が開始された。
「そういえば、わしらが到着するまでに何か処置はしたかね?」
「え?えぇ、回復魔法を行いました。」
「で、効果は?」
「ありませんでした。」
「…そうか」
ドクターは話を聞きながらフィーナの血液を検査薬に溶かしていった。
「これは…」
「なにかわかったんですか!?」
「何年アルアで医者をやっとるとおもっとるんじゃ、わしにかかればこんなもの一発でわかるわい。」
「で…フィーナの体調不良の原因は…?」
「ずばり!栄養失調じゃ!」
「え、栄養失調!!?」
「そう、血液を調べた結果、極端にエネルギー源が少ないことが分かった。じゃから、栄養満点の食事を摂れば病状は回復するはずじゃよ。」
「そうなのか…よかった…」
「じゃあ、食事をすれば治るんですね!?」
「そうじゃ。」
「なら、私が料理を作ります。大切な幼馴染が大変だってのに私だけ見てるだけなんてできない!」
「わかった、任せたぞ。村にいるほかの女性達にも協力を仰ぐといい。」
「わかった、じゃあ、行ってくる。」
そして二ーナとドクター達は村へ戻っていった。
「…これでひとまずは安心だな」
そういいながらダンも休むことにした
一方リタたち成分調査隊は
「どうですか?何かわかりそうですか?」
「う~ん…普通の水とは違うものだというのはすぐに分かったんですけど、その先がなぁ」
「フィーナが言うには最近発表されたばかりのものらしいですけど」
「そうなんですね…だったらフィーナさんの家に成分表置いてないかな」
「あ、あるかもしれないです!以前会ったときフィーに郵便物が届いていて新薬の成分表だって言ってました!」
「ほんとですか!?であれば確認するしかないですね。」
「フィーにはごめんだけど家に入らせてもらいましょう。」
ふたりはフィーナの家に向かった。
家に入るとたくさんの研究資料や成分表らしき紙とさまざまな実験道具が置かれていた。
「いかにも研究者って感じの家ですね…」
「ですね…でも、こんなにもの物があるのに散らかってる印象を持たないのは彼女の才でしょう。とてもきれいに片付いています。」
「さぁ、あの液体の成分表を探しましょうか」
「はい!急ぎましょう!あ、荒らさないように」
ちょうど同じころリーナ達女性陣は調理を開始していた。
「前から研究に熱中してて食事をするのを忘れてたことがあったけど、まさか失調になるくらいまで研究してたなんて…」
調理をしていると手伝いに来ていた村人のひとりが口を開いた。
「そうだわ!こんなことが起こった以上私達も今後あの子のことが心配だからこれから毎日あの子の家に交代でご飯を持っていきましょう!」
「それはいいわね!そしたらあの子もご飯を忘れても大丈夫だし、あの子あんまり村に馴染めてないから馴染めるきっかけにもなるかもしれないわね!私は賛成よ」
「いいわねぇ」
その場に居るほとんどの人間がこの意見に賛成した。
それから他愛もない会話を交わしながら食事を作り続け、ほぼ完成というところまで来ていた。
一方フィーナ宅では
「彼女は結構きれい好きだからどこかにまとめてるとは思うんですけど…」
「見当たりませんね…」
「彼女の持ち物は確かめたんですよね?」
「えぇ、二ーナが体の隅々まで」
「となると可能性はふたつですかね」
「可能性…?」
「えぇ、一つはそもそも成分表が存在しないというもの、もう一つは成分表は存在するが何者かによって盗まれてしまったというものです。」
「盗まれたって…」
「可能性は0じゃないですよ、この村、獣への進入対策は行っていますが人間に対しては驚くほど無防備ですからね。」
「まぁ、そうですね」
「仕方ないですね、もうすぐ日も落ちますし成分表は一旦諦めて戻って彼女に食事を届けますか」
「ですね、そうしましょう。」
リタたちは女性達が調理している家に向かった。
「すいませーん、料理できてますか?」
「あ、リタさん!ちょうど出来上がるところですよ!」
「わぁ、こんなにたくさん!ありがとうございます!」
「ついでだからアルアのみんなの分も作っちゃったわ、あの子達が戻って来たらアルアの全員で食事よ!」
「いいですね、そうしましょう!」
「ただ、作りすぎてあの子の元へ持っていけないから頑張って村まで戻ってきてもらわなきゃだけど、大丈夫?」
「分かりました!戻って状況を話してなんとかしてみます!」
「お願いね、私達は戻ってきたらすぐ食べられるように準備しておくから」
「分かりました、お願いします」
リタは女性達に準備を任せ、フィーナとダンの元へ急いだ。