第3話
突如村に現れた魔女のプニシラはダンの家を奪い住み始めた。それからは村人全員が魔女の指示で動く日々が続いた。
「リタ、麓の街へ行って少し買い物をしてきてくれないか?」
「買い物?何を買ってくるんだ?大体のものはこの村で作れば間に合うだろう。」
「あぁたしかに大概のものはここで生み出せ、使える。食べることも出来る。安全性もバッチリだ。不満はないよ。」
「だったら尚更、何を…?」
「あぁ、ここでは生み出せない。作り出せないもの。氷の魔道具だ。」
「氷の魔道具!?」
「あぁ、この村では暑い中どうやってものを保存しているんだい?」
「それぞれの家にある床下の部屋で保存している。地面の下は涼しいからな。」
「そう、そこだ。ボクは綺麗好きでね、1度埋めたような汚い食べ物は食べたくないんだよ。」
「分かった…あんたの言う通りにしないとこのまま夜は明けないんだからな。それで、どうやって運べばいい?」
「そんなのはボクの知ったことでは無いよ。このダケイ山のことは君たちの方が詳しいだろう?だから君たちに任せる。支払いもね」
「……分かった少し尺を測りたいからどこに置くかは決めてくれ。それを決めてくれないと私も何も出来ない。」
「あぁ、そうだな…ここがいい。ここにしてくれ。」
プニシラは部屋の隅を寝転びながら指さす。
「じゃあ、ピッタリのを頼むよ。あ、万一傷をつけて帰ってきたらまた買い直しに行ってもらうからね。」
「………」
リタは何も言わず、尺を測って魔女の家を出ていった。
魔女の家から出るとそこには不安げな眼差しを向けるニーナの姿があった。
「どうしたんですかリタさん、何を言われたんですか?」
「あぁニーナ、実は…あの魔女に麓の街で氷の魔道具を買って来いと言われまして…」
「氷の魔道具を!?」
「……」
リタの脳裏に過去の記憶が蘇る。かつてアルア村で起こった悲劇が…
その日、アルア村はいつも以上に活気づいていた。