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魔法少女探偵 加賀惣助  作者: 月坂唯吾
8/11

(八)

『cherryの身元が分かったよ』電話は功太からのものであった。第一声が少し誇らしげに聞こえたのは、気のせいではないだろう。

「さすがはスーパーコンピューター並と呼ばれる頭脳の持ち主ですね。もう分かりましたか。御見それしました。おそらく警察の方は、まだ接続ログから複数のサーバーを辿っている最中でしょう」

『こんなの熊谷の事件の時の自爆プログラムに比べれば簡単だったよ』

「あの時は3日くらいかかりましたからね。それはそうと、cherryの身元をそろそろ教えていただけますか」

『うん。名前は小橋郁也。26歳。住所は埼玉県草和市鴨井476-17だよ』

「住所からすると一軒家ですかね。実家でしょうか。分かりました。功太お手柄でしたね。明日のお昼ご飯は功太の好きなものでいいですよ」

『やった。ありがとう』

「私達はこれから小橋の自宅に向かってみます。時間になったら功太も多喜さんもあがっちゃって構いませんので」

『うん。分かった』

 電話を終えた私はcherryの身元が分かったこと、そして小橋の自宅へこれから向かうことなどを奈津美に伝え、再びスマホを操作した。もちろん当初の目的どおり、祖父江に電話をかけるためだ。

 普段は何度電話をかけても出ない祖父江であったが、今日は珍しくワンコール目で電話に出た。

『俺だ。何か分かったのか?』

「まずはそちらの捜査状況から教えていただきたいのですが」

『分かった。お前から聞いたサイトに上がっていた『噴水での殺人事件』だが、現場は大城市留居戸の桜紀公園の噴水だった。サイトの写真と全く同じ状態で遺体も発見された。死因は刺殺。背中を鋭い刃物で三度刺されていた。それと今回の桜紀公園の事件、板沢の建築資材置き場の事件、最奈深の森林公園の事件。この3件の事件の害者の身元が分かった。桜紀公園の被害者は入江明美、24歳、会社員。板沢の建築資材置き場の被害者は水野清音、22歳、学生。最奈深の森林公園の被害者は田所美和、26歳、会社員だった。重要参考人であるcherryと名乗る人物の身元はサイバー犯罪対策課に今調べてもらっている』

「被害者同士の横の繋がりや共通点などはないのですか?」

『今のところ被害者同士の繋がりは確認できてはいない。こっちでは無差別の連続殺人事件というセンも含めて捜査を進める予定だ。それで、お前の方でも何か分かったのか?』

「はい。cherryと名乗る人物の身元が分かりました。名前は小橋郁也。26歳。住所は埼玉県草和市鴨井476-17です。これから私たちは小橋の自宅へ向かってみようと思います。警察のほうでは、小橋郁也という人物を詳しく調べていただけますか?」

『さすがは名探偵だな。もうホシにまでたどり着いていたか』

「小橋が犯人かどうかはまだ分かりませんよ。確かに重要参考人であることは間違いないですがね。それに小橋の身元を割り出したのは私ではありません。うちの優秀な事務員です。名探偵という面では私はまだ何もしていませんよ」

『どちらにしても、小橋が犯人の可能性がある以上、十分気をつけて調査に当たってくれよ』

「分かっています。でも今日は小橋を確保する為に向かうのではありませんから」

『では、どうして小橋に会いに行く必要があるんだ』

「会うわけではないです。接触する気はありませんから。小橋がかえぴょんさんの事件にも関与していたならば、私たちが追っていた偽警察官と小橋は同一人物かも知れません。偽警察官にはどうやら私のことを知っているような節がありますので、小橋が偽警察官と同一人物ならば、小橋も私のことを知っている、ということになります。ですから、小橋が私の知っている人物かどうかを確かめに行くんです。小橋に気付かれないよう、こっそりと顔を確認してこようと思います。ですから小橋に任意同行をかけるのは、もう少しだけ待っていただけますか」

『そういうことなら分かった。また何かあったら連絡してくれ』

 

 私は小橋の自宅へ向かうため、草和市に向け車を走らせた。もちろん助手席には奈津美が座っている。

 小橋の自宅は草和駅から3キロほど離れた郊外の閑静な住宅街にあった。道幅は普通乗用車がぎりぎりすれ違えるほど。まだ辺りは明るいものの午後6時という時間からか、人通りは少なく、一軒家の白い外壁はひっそりと息を潜めているようであった。駐車場に車はない。白いレースのカーテンが閉められた3つの窓と、室内に電気が点けられていないのか闇に染まる真っ黒な2つの出窓。通りから確認する上では明らかに留守宅だと窺える。

 私は小橋の家と、隣家の間にある電柱の手前に車を停車させると、奈津美を車内に1人残し、車外に出た。留守だと確信しつつ、小橋の家のインターフォンを押してみる。やはり中から人の気配は感じられない。

 私は小橋の家に誰も居ないことを確認すると、奈津美の待つ、車へと戻った。ここで張り込んでいれば、いずれ小橋や家族が帰ってくるかもしれない。

 小橋を待ち続けて1時間ほどが経ったであろうか。辺りに注意を図り続けてはいたものの、気が付くと住宅街はいつの間にか闇に閉ざされていた。奈津美との会話が楽しすぎていささか注意を欠いていたのかもしれない。

 先程まで人の存在すら確認出来なかった住宅街は、各家々から漏れる室内の薄明かりによって、いつの間にか、ここに暮らす人々の存在や生活、温もりなどを感じ取ることができるようになっていた。もちろん小橋の自宅は依然として闇の中にあり、どこからも住人の存在や温もりを感じとることは出来ないのだが。

 確かモーゼの十戒と言ったであろうか。海を2つに割り、道を作ったとされている人物の話だ。まるでそれを再現しているかのごとく、突如私の目の前で闇が光によって4つに分断された。どうやら後方から車がやってきたようである。やってきたセダンタイプの車は私の車を少し追い越すと停車し、バックライトを転倒させた。バックで車を駐車しようとしているのだろう。駐車しようとしている場所は小橋の自宅。車を運転しているのが小橋だという可能性もあることから、私と奈津美は車を運転している人物の顔を確認しようと目を凝らした。しかし、それは相手にとっても同じようであった。自宅前に駐車する車が気になったのであろう。運転手は車をバックさせつつも、ちらりと視線をこちらに送った。だが気付かれる心配はないはずだ。誰かが乗っていることは分かるだろうが、この暗さでこちらの顔まで確認出来るはずはない。そして幸いなことに、相手の運転席は電灯の明かりで照らされ、こちらからは運転している人物の顔がはっきりと確認できる。

 だが予想とは裏腹に、相手の運転手はちらりと視線をこちらに送った直後、ブレーキを踏んだ。そして車はそのまま逆方向へと向け急発進する。

「えっ、どういうこと? 顔は見えていないはずなのに、どうして惣さんがいると分かったの?」突然のことに驚いたのか、まるで自問するような言葉を発する奈津美。

「惣さん、どうしたんですか? 早く追いかけましょうよ」奈津美は尚も焦りの色を見せ、小橋の車を追うように、と私を促す。

「いいえ。追いかけません」

「どうしてですか? また私が足手まといになるからですか?」

「いいえ。そうではありません。祖父江さんにも言ったように今回の目的は小橋の確保ではありませんから。それに目的ならもう果たせました」

「小橋の顔が確認できたからですか?」奈津美は依然としてやや不服そうではあるものの、私の言葉を受け、自分を落ち着かせようとしているのか、胸に手を当てている。

「はい。その通りです。予想通り小橋は私の知っている人物でした。小橋が私のことを知っていた理由もよく分かりました」

「えっ、一体誰なんですか?」

「分かりませんでしたか? 奈津美さんも知っている人物ですよ」

「私もですか? 全く記憶にないんですけど」そう言いつつも、考える素振りを見せない辺りは今時の女の子である。

「どうやら私は致命的な推理ミスを犯していたようです。偽警察官は小橋でした。そして偽警察官は偽者ではなかった」私は奈津美が推理できるようにヒントを出すと、スマホを取り出し、祖父江に電話をかけた。

「祖父江さん、すみません。小橋に見つかってしまいました」

『逃げられたのか』

「はい。小橋は車で逃走しました。おそらく自宅にはもう戻らないでしょう。小橋の車の車種はZURA社のカブール。色はシルバーです。ナンバーは大宮ふ○○―○○。緊急配備よろしくお願いいたします」

『分かった。ところでお前がそんな失態を繰り返すとは思えない。他に何か掴んだことがあるんだろう?』

「さすがですね。かえぴょんさんの動画に映っていた偽警察官の正体は小橋でした。かえぴょんさんを殺害したのも、おそらく小橋でしょう。それと小橋は私たちと面識がある人物でした。祖父江さんに呼び出されて、私たちが桶谷市の矢野望公園に向かった際、矢野望公園の駐車場に配備されていた警察官です」

『警察官? 小橋は警察官なのか』

「はい。ですからそれが分かれば、そちらで小橋のことを調べるのも簡単なはずです」

『サンキュー、それは助かる』

「そこで1つお願いがあるのですが」

『なんだ?』

「小橋のことを調べ終わったら、私にも教えて頂けないでしょうか」

『構わんが、小橋の自宅の家宅捜索なども行わなくてはいけない。連絡するのは明日の朝でも構わないか?』

「はい。それで結構ですので、お願いします」

『あとは小橋を確保すれば事件は解決だ。後のことは全てこっちに任せろ』祖父江はそう言うと、私の返事を待つことなく、一方的に電話を切った。

 電話に聞き耳を立てていた様子の奈津美は、私と祖父江の会話からようやく小橋の正体に気が付いたのだろう。私が電話を終えたことを確認すると、直ぐに声をかけてきた。

「小橋って、矢野望公園の駐車場にいた、私たちを捜査一課の阿部さんの所まで案内してくれた警察官なんですか?」

「はい。間違いありません」

「凄いですね。あんなに少ししか会わなかった人の顔なんて、よく覚えてられましたね。私なんて全く分かりませんでした」

「何処に事件のヒントがあるか分かりませんからね。探偵を続けていけば奈津美さんにも自然と身についてきますよ」

「そういうものでしょうか。でもこれで小橋が捕まれば事件は解決なんですよね?」

「そうですね。小橋がかえぴょんさんを殺害した犯人である可能性は高いですし、サイトを見る限り、小橋が他の事件にも少なからず関与していることは間違いないでしょう。ですから祖父江さんから依頼を受けた、探偵としての仕事はおそらくここで終わりです」

「何だか奥歯に物が詰まったような物言いですね。まだ何かあるんですか?」

「あえて言うなら、事後処理的なものです。小橋は殺人を犯しましたが、一方では市民から信頼されている警察官でした。おそらく人一倍強い正義感を持ち合わせていたものと思われます」

「だったらそんな人が、かえぴょんさんを殺したりなんてしないんじゃないですか?」

「いいえ。人間と言うものは誰もが二面性を持っています。普通ならば2つの面がお互いに干渉しあって、バランスを取り合っているものですが、小橋の場合はそのバランスが何かのきっかけによって崩れてしまい、一方の面が暴走してしまったのでしょう。おそらく小橋は正義感が強く、優しい一面と、暴力的で、殺人に依存するサイコパスのような一面との、二つの面を共有していたものと思われます。正義感が強く、優しい一面は元々小橋が有していた一面でしょう。そしてサイコパスのような一面は、おそらく小橋が過去に体験した何かがトリガーとなって覚醒した後発的なものだと思われます」

「過去に体験した何か、って何ですか?」

「小橋がサイコパスのような一面を持ち合わせていることから、おそらく人の死に関係するものだと思われます。そしてそれら何らかの出来事によって、小橋は不安定な精神状態下に陥ったのでしょう。そこを狙われてしまった」

「狙われてしまった? 小橋を操っていた黒幕がいるってことですか?」

「正解でもあり、不正解でもあります。不安定な精神状態下に陥った小橋の心に取り付いたのは魔法生物です」予想外の言葉だったのか、一瞬虚を突かれたような表情を見せる奈津美。

「魔法生物? 惣さんが魔法少女に変身するのに必要だと言っていた魔法生物ですか?」

「正確には魔法生物になりきれなかった皮我(ひが)と呼ばれる下級生物です。皮我には人の心の中の『負の部分』を好んで食べる性質があり、取り付かれると人は負の感情に支配されてしまいます」

「一応聞いておきますが、本気で言っているんですよね?」上目遣いで苦笑いを浮かべる奈津美。

「信じられないかもしれませんが冗談ではありません。一度取り付かれると皮我はお腹がいっぱいになるまで離れることはありません」

「はあ。よく分かりませんが、とにかくその皮我ってやつが、人の中の負の部分を食べつくすのを待っていれば治るってことですか?」

「いいえ、そうとも言い切れません。皮我に負の部分を食べつくされた人間は、心の花が枯れて死んでしまうからです」

「今度は心の花ですか。ますます訳が分からなくなってきました。でもそれじゃあ、一度皮我に取り付かれた人間はもう助からないってことなんじゃないですか?」

「いいえ。勘違いされたかもしれませんが、皮我はそれほど体に害を及ぼす生物というわけでもないんですよ。それに珍しい生き物というわけでもないですしね。取り付かれている人だって、街を歩いていれば頻繁に見かけますよ。私たちは今日、様々な店を訪れ、たくさんの方々からお話を窺いましたが、その中にも4名ほど皮我に取り付かれた方はいらっしゃいましたよ」

「えっ、その人達は皮我に取り付かれたままで大丈夫なんですか?」

「ええ。統合失調症などと間違われることは多いと思いますが、小橋のようにサイコパスのような一面を持ってさえいなければ問題はありません。周りから少しネガティブな人間だと思われるくらいでしょう。皮我もお腹がいっぱいになれば離れていきますしね。ですが小橋のようにサイコパスのような一面を持っていたりすると、心の中の負の部分が大きすぎる為に、皮我が急成長してしまうのです。大きくなった皮我は食欲も旺盛ですし、負の部分を食べつくすまで離れることはありません。つまり、そうなった人間は心の花が枯れて死んでしまう、ということです」

「それじゃあ、小橋はもう助からないんですか?」

「いいえ。1つだけ方法があります。それは皮我をイレースすればいいのです」

「イレースって英語のerase(消去)ですか?」

「はい。つまり皮我を倒せばいい、ということです」

「そんなことが出来るんですか?」

「結論から言えば可能です。ですが、それには魔法少女の力が必要です」

「じゃあ問題ないじゃないですか。惣さんは魔法少女なんですよね?」

「はい。ですが私は魔法生物がいないと、魔法少女に変身することが出来ません。つまり今のところは打つ手がないということになります」

「じゃあ小橋は逮捕しても結局死んでしまうんですか?」

「このままいけばそうなりますね。ですが私が一度受けた依頼です。このままでは終わらせません。最後まで足掻いて、何としてでも小橋を救って見せます」

「惣さんの言っていることは分かりました。でもごめんなさい。正直なところ今の話を全て信じているかと聞かれると微妙なところです」

「それで結構です。全てを信じろ、という方が難しい話ですからね」

「ちなみに確認なんですけど、その皮我ってやつは私には付いてないですよね?」

「安心していただいて結構です。奈津美さんに皮我は取り付いていません。魔法少女の私が言うのですから間違いありません」

「良かったです。いくら目に見えなくても、そんなのが付いていると思ったら気持ちが悪くて仕方がないですからね。ちなみに惣さんはどうやって皮我ってやつを確認しているんですか? そもそもどうして小橋がその皮我ってやつに、取り付かれている、って分かったんですか?」

「先程目視で確認しましたから」

「えっ、皮我って目に見えるんですか?」

「いえ、普通の人には見えません。ですが私には見ることが出来ます。魔法少女ですから。それと小橋が皮我に取り付かれていると分かったことで、1つ判明したこともあります」

「何ですか?」

「警察は時間経過や、死体の遺棄された状態などから、かえぴょんさんの事件の犯人を複数犯だと断定しました。しかし今の状況では小橋の単独犯という可能性が最も高い。では小橋は1人にも関わらず、短時間でどうやってかえぴょんさんの遺体をあのような状況で遺棄することができたのか。私はその矛盾点が気になっていました。しかし小橋があれだけ大きな皮我に取り付かれていたのならば話は別です」

「どうしてですか?」

「皮我に取り付かれた人間は身体能力が飛躍的に上がるからです。重いものも難なく運ぶこともできますし、車を素手で破壊するなんてことは勿論、3メートルほどの高さの壁なら有に飛び越えることも可能です。皮我に取り付かれた状態の小橋ならば、1人でかえぴょんさんの遺体をあのような形で遺棄することも容易いでしょう」

「皮我ってどんな形をしているんですか?」

「七色に光るアメーバのような姿です。取り付かれると胸の辺りに張り付いて離れなくなります。ちなみに皮我は下級生物なので魔法生物のように言葉を話すことは出来ませんし、魔法少女以外には触ることも出来ません」

「そんなの魔法少女に変身できないんだったら、どうやってやっつけるんですか?」

「分かりません。ですが私でしたら皮我に触ることは出来ますので、無理やり引き剥がすなり、叩いてみるなり、出来ることを何でもやってみようと思います」

「そんなことをして逆に襲われたりはしないんですか?」

「おそらく小橋の体を使って抵抗してはくるでしょう。ですが今のところそれしか手段がありませんから仕方がありません。むしろ問題があるとすれば、警察が小橋を発見するよりも早く、私たちが小橋と接触できるかどうかのほうが問題です。警察に逮捕されてしまっては、私たちが小橋に手を出すことができなくなってしまいますからね」

「だったら小橋が警察官だってことは、まだ祖父江さんには教えないほうが良かったんじゃないですか?」

「いいえ。祖父江さんは私たちの依頼人です。重要参考人について分かったことがある以上、それを報告しないのはルール違反です。それと小橋が警察官であることを祖父江さんに伝えたのには、もう1つ理由があります。それは小橋のことを警察のほうで調べてもらうため。もちろん警察のほうでも既に小橋のことを調べ始めてはいるでしょう。ですが情報は少しでも多いに越したことはありませんし、小橋が警察官だと知っているのと知らないのとでは、集まる情報の量と時間が飛躍的に違うと思われますから」

「そう言えば、さっき電話で小橋のことを調べ終わったら教えて欲しい、って祖父江さんに言っていましたね」

「はい。明日の朝、教えてくれる、ということでした。これで今まで警察のほうで集めた情報や、警察関係者からの情報など小橋に関する情報をたくさん得ることができるはずです。情報は小橋の潜伏先や行き先を予想することにも役立ちますし、小橋の人となりや性格を判断するなど、プロファイリングにも役に立ちます」

「でも明日の朝までに、警察が小橋を逮捕してしまったらどうするんですか?」

「小橋がまた事件を起こさないとも限りません。ですから少しでも早く小橋が逮捕されることは望ましいことだと考えています。しかしその反面、それでは小橋の命を救うことは出来なくなってしまう。難しいところですね。ですが、おそらく明日の朝までに警察が小橋を確保する可能性は低いと思われます。運が良ければ小橋を発見することくらいはできるでしょうが、任意同行を含め、身柄を拘束することは不可能でしょう」

「どうしてですか?」

「先程も言ったように、小橋が皮我に取り付かれているからです。飛躍的に身体能力が上がった状態の小橋を確保するのは、警察の特殊部隊でも苦戦を強いられることでしょう。もちろん自衛隊やアメリカ軍などに協力を要請すれば容易いのかもしれませんが、それでは明日の朝までには間に合わない。小橋は犯罪者ですが、まだ司法の判断を受けている訳ではありません。ですから私は彼の更生を考え、彼の中の皮我を何としてでもイレースしたいと考えています」

「分かりました。惣さんがそれだけ真剣に小橋のことを考えているのなら、私も惣さんの話を信じてみようと思います」

「ありがとうございます。祖父江さんからの情報を元に、なんとしてでも私たちの手で小橋を見つけ出しましょう。明日中に事件を終わらせます」

「はい」


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