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さらに5時間くらい前

 あの晩、僕が目を覚ましても、かすみセンパイはまだ眠っていた。 


「……センパイ?」


 声をかけたが、安らかな寝息が聞こえるだけだった。

 帰ろうかな……。

 そう思ったけど、玄関にカギをかける者がいなければ無用心で仕方がない。

 両親も帰ってこないとなれば、かすみセンパイを起こすしかなかった。

 でも、この寝相……。

 いや、見るな見るな見るな。

 一度は目を覚まさないで済んだが、もし同じことになって、目を覚まされたりしたら……。

 夜遅くなってからオフクロに電話しようと思えばできた。だが、電話すれば帰らざるを得ず、台本も間に合わない。

 僕は、自分に誓った。


「今、ここで完成する!」


 何よりも、僕は決してやましいことはしていないという自負があった。子どもっぽい意地といわれればそうだが、家に電話するのは負けだという気がした。

 そんなわけで、僕は一度切った携帯電話の電源を再び入れる気にはなれず、センパイが目を覚ますまで台本を作りながら待つこととなったのである。

 そして、僕が最後の一文字を打ち込んで、データを保存したとき。

 センパイの、眠たげな声が聞こえた。

 振り向いてみると、僕の顔を見て目を瞬かせている。


「あ……え? あれ、真崎?」


 気が抜けたような、ほっとしたような。

 どっちつかずの気持ちで、僕はとりあえず、笑ってみせた。


「起きました? 今、台本できたところ……」

 

 かすみセンパイは、いつになくうろたえていた。

 ベッドの上に正座すると、服の裾を抑えて金切り声を上げる。


「え、何、いや、アタシ、何でここで……この格好ナニ? あ……真崎いいい!」


 いきなりの怒号に、僕は呆然とするしかない。


「へ……?」


 ……びった~ん!

 目を覚ましたセンパイが問答無用で食らわした平手打ちの痛みは、今でも頬に残っている。でも、決してイヤな思い出ではない。

 だって……。

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