最大の救いにして最大の敵、それはIT機器
僕の伸ばした手は空を切った。センパイの手がするっと下に動いたからである。
「え……ちょっとそれ、え? まさか?」
全部、気づかれてたとか?
焦ったその時、スマホが再び鳴った。
……うるさいオフクロ、メシいらねえって言ったろ!
両親にそんな暴言など吐いたことなどないが、本当に電話に出ていたらそう言っていたろう。
スマホを取ろうとしていた僕の手は、止まっていた。
手……手が、かすみセンパイの手が!
かすみセンパイの手が、タンクトップの裾にかかっていた。
もがいたせいか、体が火照っているのだろう。よほど暑いのか、その手はじりじりとタンクトップをたくし上げていた。
熱い吐息が、かぐわしい。
「ふう……はあ……あ、う……!」
だ、ダメだろ、それは……。
見てはいけない。だが、体が言うことをきかない。
……そうだ、スマホ鳴っているんだからそれで眼をさましてくれないかな!
だが、頭の片隅で理性がそう叫んだ瞬間、何事もなかったかのようにスマホの電源は手の中で切られていた。
僕の目は勝手に、センパイの様子をうかがう。
かすみセンパイは白い歯のこぼれる、きれいな唇を微かに開いて、喘いでいた。
「……ん、ん、あ……」
寝てる、よな?
まだ、眼を覚ます気配はない……。
そう思ったとき、パソコンのハードが仕事を急かすようにカカカと鳴った。
いかん! 何考えてんだコラ!
ぶんぶんと頭を振ると、再びセンパイの手はベッドの下へと垂れ下がり、タンクトップは素肌を晒す危機を免れた。




