センパイの熱い想い
背後のベッドの上で、かすみセンパイが囁くような声で語りかけてくる。
「でもね、アタシ、嬉しかったんだ、アンタが手挙げてくれて」
余程眠いのか、センパイの声は、ますます小さくなる。僕の手が一瞬、止まった。作業を促すように、センパイは続ける。
「ウチの学校、底辺校でしょ? でもね、この演劇部には演劇部の意地があるの。芝居だけは誰にも負けない、っていうね。だからアタシ、ここを選んだ。皆、プライド持って、できることを一生懸命やってる。だからアタシは、ここが好き」
好き、という言葉に、なぜかドキっとした。自分がそう言われたわけでもないのに。だがセンパイは、そこで言った。
「でもね……」
まだ何も言ってないのに、胸がきゅんと痛んだ。僕にできることなら、何でもしたかった。
「……何ですか? 僕でよかったら……」
声が、急に厳しくなる。
「タシたちの先輩が築いてきた伝統と実績にアグラかいてる連中がいるのも確か。アタシ、入部してからずっとそれが悔しかった」
内心、グサリときた。僕のことだ。
適当にやって大会上位に入って、記録を調査書に書いてもらおうと思っていたのだ。
その僕に、センパイは言った。
「でも、アンタは台本担当に手を挙げた。動機はどうだか知らないけど」
一言多いが、それには返す言葉がない。僕はキーを叩きながら、次の言葉を待った。
だが、センパイの「寝ながら説教」はそこで終わってしまった。
僕の耳に残ったのは、かすかな囁きだけである。
「教えることは教えたからね。あと、任せた……」




