そしてセンパイから……可愛い女の子へ
そこで、かすみセンパイは言い忘れていたらしいことを、眠りに落ちる前に付け加える、
「トイレは下。行くときはドア向いて真っ直ぐ歩け」
寝姿を覗き見ようとしたのは、とりあえず許してくれたらしい。
「はい……」
まじめくさって返事すると、声は再びフニャフニャとなった。
「疲れちゃった。アンタの電話一日中待って、一晩中怒って、半日怒鳴ってたら」
それは、僕も悪かったとは思っている。
だが、家から出してもらえないのはどうにもならなかったのだ。
「すみません……」
とりあえず謝った。センパイの怒りの前では、いかなる反論も効果はない。
だが、意外な言葉が返ってきた。
「ゴメン。アタシもちょっと意地張りすぎた。アンタのことだから、アタシが電話してくるだろうと思ってるんじゃないかと思ったら、なんか腹立ってきちゃってさ」
そこまで信用がないのか、僕は……。
情けない気持ちになってくるのをこらえながら、ひたすらキーボードに集中する。
でも、センパイのほうからも謝ってきたのは、何だか可愛かった。
胸の奥が締めつけられるような、不思議な気分になる。
そんなときだった。
トサ、と寝返りを打つ、布団の音が聞こえる。
「結局こんな突貫工事になっちゃった。ゴメン……」
追い詰められてはいるけど、気持ちはなぜか充実していた。
センパイと一緒なら、どんな難題でも片づけられる気がする。
「いえ……」
それだけ答えて、僕はキーを叩き続けた。その一言で、連休前からのシゴキに対する怒りも不満も消えてなくなっていた。




