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そして(対決)ショーダウンへ

 だが、僕は先輩の呼吸を盗んで言葉を継いだ。


「そこで例の詰問のシーンになるわけですね」


 センパイは答えなかったが、その気持ちは様子を見れば分かった。


「その先……その先は?」


 ひたすら次の展開を急かされて、僕は自信満々で大詰めの説明に入る。

 それは、集中豪雨の夜のシーンだった。

 家の外の天気など気にも留めず、観は呑気にテレビなんかを見てくつろいでいる。


《おわ、映んないよ衛星放送。降りすぎだろ、雨。寝よ寝よ寝よ……って、ん……? 非通知? 誰から?》


 それは、ありえない相手からの電話だった。


《観……? 観……ね?》

 

 電話番号など教えてはいないし、そもそもスマホはおろか黒電話も、あの小屋にはなかったはずだ。


《悠里? 何で俺の携帯……あ、あのメカなら分かるけど……いや、珍しいから、つい……》


 嬉しさと戸惑いとで、観は自分でも何を言っているのか分からない。

 そのうえ、悠里の言っていることは、聞いただけで理解できるものではなかった。


《ありがと、観……楽しかった》


 その真意を、すっかりうろたえている観が汲みとるには少し時間がかかった。


《いやそれほどでも……、って何その「今夜が最後」的な発言!》


 慌てふためく観に、悠里は静かに告げる。


《もう、来ないほうがいいわ、あなたのためにも》


 だが、そこで観はきっぱりと言った。


《俺のことは……俺が決める》


 悠里も、冷たく言い放つ。


《じゃあ、私のことは、私に決めさせて。あなたには、どうにもできないことなの》


 観は声を荒らげて問い詰めた。


《おい! どういう意味だよ、おい!》


 電話の向こうの声は、次第に遠くなっていく。


《じゃあ……ね、楽し……》


 観はひたすら叫び続ける。


《悠里! 悠里!》


 ひと芝居終わったところで、僕はそのシーンを締めくくった。


「車のバッテリーやら電池やらをかき集め、観は豪雨の中を出て行きます」


 かすみセンパイも、深く息をついてから、おもむろにつぶやいた。


「ショーダウンね」


 話を遮る聞きなれない言葉に、僕は思わずきょとんとする。


「……といいますと?」


 かすみセンパイは勿体ぶって言い直した。


「対決……メンバー一同、観の後を追って廃屋に集結、でしょ?」


 その目がキラキラと輝いているのに、僕は思わず見とれた。

 でも、とりあえず返事だけはしておく。


「……ええ、まあ」


 かすみセンパイは、僕の背中を思いっきりぶっ叩いた。


「絶好調じゃない! 頼むよ!」


 僕も、このペースで行けば連休中に余裕で台本が完成すると思っていた。

 だが、神様は意地が悪い。コトはそう簡単には行かなかった……

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