センパイからの一発OK
次の日、かすみセンパイは、昔話の続きをねだる子どものように尋ねた。
「で、それから?」
僕も、子どもに語って聞かせるように話を続けた。
「観は廃屋に通って、悠里に現代のことを語るようになります。でも、悪友の小菅と、幼馴染のあきらに気付かれてしまうんですね」
僕は、ほかの登場人物を演じながら、「なか」の中盤までを説明した。
《やるじゃねえか、行け、羽佐間! ガンガン押して、最後は一気に……って何言わせんだこのスケベ、いいからいいから、誰も見てねえんだから俺だって見てないから報告だけきちんとしろ絶対だぞハアハア……》
これが、小菅だ。
訳も分からず観をけしかける。
友達のことを深く思いやりはするが、勢い余って羽目を外してしまう、優しくて落ち着きのない男だ。
観を問い詰めるあきらは純粋に観を慕ってはいるが、幼馴染の甘えからか、無条件に独占できると思っている幼さがある。
だから、口調はこうなる。
《ちょっと何よ、あの子誰、あたしに無断で何やってんの信じらんない! あっそう、言わないの、じゃあちょっと観っとこの小母さんに相談しよっかな~、え~何? よく聞こえないな~!》
かすみセンパイは楽しそうに聞いていたが、やがて、もったいをつけて尋ねた。
「じゃあ、どこから始めるかわかるね?」
もちろん、答えられると踏んでのことだ。
僕は敢えて、面倒臭そうに返事をする。
「あきらが観を問い詰めるシーン」
センパイは、満足そうに頷いた。