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センパイと過ごす夢の時間の始まり

 窓の外で、桜の木がざあっと風に揺れる音がした。先輩の身体に映る光と影もきらきらと騒いだ。

 その中で胸の内を語る先輩は、まるで異世界から現れた仙女か妖精のようだった。


「大会出る以上、ウチにはウチの伝統と面子があるのよ。台本の質は落とせない。アンタに書かせると言った以上、最高のものに仕上げる義務がアタシにはある」

 

 かすみセンパイが何で僕に厳しく当たるのか、ようやく納得できた。

 センパイは心の底から、演劇と、自分の関わっている演劇部が好きなのだ。

 こんな熱い気持ちを聞かされたら、それなりの態度で受け止めなければならない。

 僕も真剣な口調で、はっきりと告げた。


「分かりました。僕は何の予定もありません」


 大きく頷いて言ったけど、本当にないのだった。かと言って、家にも居たくなかった。あのオフクロや、ゴロゴロしている頼りないオヤジと一緒にいたくなかった。だからと言って出かければ、オフクロがうるさい。僕にとっては願ってもないことだった。

 そんなわけで、僕は一も二もなく了解した。

 話が噛み合っているように見えて、僕たちの温度差は結構、大きい。

 それでも、かすみセンパイの顔は喜びに輝いた。窓の外で、また初夏の風がどっと吹いた。


「ありがとう……」


 僕の予想では、その一言がセンパイの口から出るはずだった。いや、僕の妄想の中では、かすみセンパイは感動で僕にしがみつきさえしていたのだ。

 だが、それはあくまでも予想と妄想に過ぎなかった。

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