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センパイとの幸せな2日間が始まる

 話の方向性が決まってしまえばあとは一気に書くだけだ。

 ……というのは甘かった。

 僕はまだ、原稿を書かせてもらえなかった。

 そっちへ話を持っていこうとすると、黒縁メガネの奥の眼が、はったと僕を見据えたのだ。


「話には進め方ってものがある!」


 かすみセンパイが主張して譲らなかったところから察するに、どうやら、台本というのは筆に任せて書くものではないらしい。

 だが、物事には締め切りってものがある。

 そう思うと、部室でのイヤな記憶が蘇った。


 ……早く書けオラ!


 昨日、この選択教室に来る前のことだ。

 僕と同じ2年生に、軽蔑の込められた怒声でせっつかれたのだ。

 たまらない屈辱だった。

 でも、それはキャストもスタッフも台本の完成を待っているからだ。

 僕も早く書きたかった。

 連休ぐらいゆっくりしたいと、前の僕なら多分そう思っただろう。

 でも、今の僕は違う。

 ストーリーの流れが見えてきたら、いても立ってもいられなくなったのだ。

 それに加えて、かすみセンパイへの心配もあった。


「あの……センパイ?」

 

 思い切って、聞いてみた。

 たぶん、周りのプレッシャーが相当、かかっているはずだ。

 僕がせっつかれているわけだから、舞台監督として面倒見ると言ったかすみセンパイだって責められてると考えるのが当然だろう。

 でも、センパイはそんな様子など見せようともしない。

 

「何? まだ話、終わってないんだけど」

 

 不機嫌な返事に、僕は縮こまった。


「いえ……何でもないです」


 早く原稿を書きたい、とは言い出せなかった。

 口にしたら最後、かすみセンパイの大激怒が爆発する。

 周りのプレッシャーからは逃げれば済むけど、放課後ずっと目の前に座っているセンパイの罵声からは逃げようがない。

 それに、僕に真剣に語りかけるセンパイの顔を見ていると、どうしても話を遮る気にはなれなかったのだった。

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