キャラと違うことするヤツ
かすみセンパイの上から目線は、相変わらずだ。
でも……そんなことが言えるほどセンパイは偉いのか?
そう思うと、ついムカッときて言ってしまった。
「じゃあ、センパイは誰に対しても同じ態度が取れるんですか?」
自分でも、鮮やかなカウンターだと思った。
そう簡単に、取れるとは言えないはずだ。
返事はというと、思ったとおりだった。
「取れないわ」
思ったより、さらっと答えるかすみセンパイだったが、それでも僕は勢いづいた。
いままでコケにされた分、思いっきりふんぞり返ってみせる。
「じゃあ、そんなこと言われたくないです」
でも、僕の逆襲は空振りに終わった。
かすみセンパイは肩をすくめて溜息をつく。
「そういうことじゃなくて」
苛立ち気味に見えたが、目を伏せて何かをぐっとこらえると、また溜息をついて言い直した。
「別にアンタを非難してるわけじゃなくて、それが人間なのよ。人間は完全じゃないから、状況が変化すれば、違う側面を見せるの」
納得できなかった。僕の常識では、考えられないことだった。
そんなのは、本当の自分じゃない。僕だって、いつも自分のキャラと違うことをしないように気をつけている。
みんな、それでいいと思ってくれている。クラスでもそう扱ってくれている。
キャラはなるべく他の人とかぶらないように、早目にはっきりさせて、自分らしく振る舞うのが当たり前なのだ。
キャラ違うことなんかしたら、みんな絶対引く。
昨日の新体操部員みたいに、汚いものでも見るような眼をして。
だから、僕は言った。