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アリストテレスと黄門さまと

「2300年も前にアリストテレスが、ギリシャで書いた『詩学』で決めたのよ」

 

 言ってるセンパイ本人は大真面目だが、理屈はムチャクチャだった。そんな大昔の人に僕の台本の書き方を指図されたくない。


「なんで、ア・リ・ス・ト・テ・レ・ス、がそんなこと決められるんですか」


 僕は嫌味たっぷりに質問した。そのくせ、また怒られるんじゃないかという気はしていたのだ。でも、かすみセンパイは諭すように説明した。


「決めたんじゃなくて、それまであった物語を分析して結論を出したのよ。これだけはソフォクレスもシェイクスピアもブレヒトも水戸黄門も変わらないの」


 かすみセンパイは頼山陽の起承転結を黒板消しで一気に消した。

 代わりに、黒板にゆっくりと「水戸黄門」と書いて解説する。


 はじめ……黄門様がやってきた土地についての情報。

 なか……事件が起こる。

 おわり……印籠が出て解決。


 例がベタすぎて反論の余地がない。


「書き直してきます」


 ようやく負けを認めたのに、センパイの一喝が飛んだ。


「まだ書くな!」

「……え?」


 加計と言ったり書くなと言ったり。

 訳がわからないできょとんとしていると、かすみセンパイは腕組みをして僕を睨みつけた。


「『はじめ』の部分で、観客に登場人物の何を見せるか、考えてこい」


 僕は指を折って数えた。


「ひい、ふう……みい」


 連休まであと4日しかない。宿題が出る連休に、台本書く余裕があるワケがない。

 最終日に、徹夜は絶対イヤだった。

 だが、そんな泣き言は許さないとばかりに、かすみセンパイはつかつかと僕に歩み寄る。

 掌で、机をバンと叩いた。


「どっちがいい? 下手に書いて全部やりなおすのと、アンタお気に入りのキャラだけ作り直されるの」


 どっちもイヤだったけど、選択の余地はなかった。

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