ドラマの構成はポエムとは違う
「なんで起承転結じゃダメなんですか」
納得しないで不貞腐れてみせる僕の顔なんか見もしないで、かすみセンパイは制服の小さな背中を向けた。まだ衣替えじゃないので、紺のブレザーだ。
早くブラウスになってほしい、と一瞬だけ邪念が囁いたところで、センパイは鋭い目つきで振り向いた。
背筋に寒気が走ったところで、センパイは低くつぶやく。
「劇は事件で展開する」
そう言うなり、凄まじい勢いで黒板にカッカッと字を書き並べる。その端っこまで書いて振り向いた。ぜーはー言いながら、チョークで黒板を叩く。
カン、という音で、そんなセンパイに見とれていた僕は我に返った。
「……え、あ、はい!」
低い声が不愛想に返事をする。
「起承転結ってのは漢詩の構成」
かすみセンパイが窓から離れると、そこには、大きく、こう書かれていた。
起 大阪本町 糸屋の娘
承 姉は十六 妹は十四
転 諸国諸大名は弓矢で殺す
結 糸屋の娘は目で殺す
どういうつもりだか、さっぱり分からない。
「なんですかコレは?」
僕の素朴な疑問を、かすみセンパイの命令が低い声で遮った。
「立て。声出して読む!」
「なんで……」
有無を言わさない叱咤で、質問は封じられる。
「読め!」
僕は、仕方なくぼぞぼそと読んでみた。
「おおさか……ほんまち……」
でも、かすみセンパイは承知しない。
「もっと大きな声で!」