起承転結で書いてはいけない理由
そんなはずはなかった。
少年とアンドロイドの説明。ふたりの恋が深まっていく。周りの人が邪魔をする。アンドロイドが壊れて消滅する。
こういう展開で書いたのだから、前半はふたりが恋に落ちるという事件が起こっているはずだ。
「だって、起承転結で書きましたよ。前半は起と承なんだから、アンドロイドと少年の恋を詳しく描けばいいんじゃないですか?」
国語の授業でわずかに習い覚えた四字熟語を使って、できるかぎり筋道を通して反論したつもりだった。
でも、それはひと言で完全否定される。
「アンタのは登場人物が延々と設定語り合ってるだけじゃない」
そう言いながら、かすみセンパイは、教室の黒板に大きく「はじめ」「なか」「おわり」と書く。
「何ですか、それは?」
僕が嫌味たっぷりに尋ねると、センパイは呆れたように溜息をついて、一音一音区切るようにこう言った。
「劇の基本的な構成」
初耳である。そんな構成、聞いたこともない。小・中・高と、学校の国語の授業だって起承転結起承転結と、お経の文句みたいに覚えさせられてきた。センパイの言うことのほうが、世間一般の常識から外れているように聞こえた。