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センパイのお怒り

「……真崎」

「……」


5月の連休まであと1週間。


「おい、真崎……」

「……? はい?」


教室の窓からは、桜の葉が風に煌いているのが見える。


「……おい、真崎周作」

「……は~あ」


 僕の頭の後ろを、センパイの声が素通りしていく。

 安藤かすみセンパイの、甲高い怒鳴り声……。

 こんな季節に、普通の高校2年生なら、教室の机になど落ち着いて向かっていられるわけなどない。

 僕の心は、窓の外へ飛んでいた。

 放課後ともなれば、下校する生徒の笑いさざめく声はいつもよりも晴れやかに聞こえるようになる。

 

 で……さあ……。

 ……そうだよね。


グラウンドや体育館では、体育会部員の気合いが勢いづいてくる。新入部員を笑顔で歓迎する時期が終わるからである。

 連休が明ければ、地区予選が始まる。夏に向けた、最初の戦い……。


……モタモタしてんな、そこ!

……オッス!


「聞いてんのか真崎!」


 かすみセンパイが、僕の胸ぐらを掴む。そのまま僕の身体を、椅子からナナメに引きずり出した。


「……き、聞いてまふ」


 いつものセンパイは大きな目がくるくるよく動く、童顔で小柄な人だ。

 でも、、今日は違う。

 黒縁メガネの向こうで僕を睨みつける目は吊りあがっていた。ちょっと血走ってもいた。

 今は紺のブレザーをピシッと着こなしているが、部活の間は黒のTシャツにジャージと決まっている。

 細くて小さい割に出るトコ出ている体……。


「何見てんだコラ」


 すらりと伸びた腕がくいと動く。固く握った拳が僕の頭を揺さぶった。


「……あ、いやその」


 これが演劇部の活動風景だと、誰が信じるだろうか。

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