願い
俺は今、後ろから殺されるのを待っている。
前世で、死んだ記憶はない。その報いだろうか。今は怯え、苦しみ死んで行くのか。
尻尾に掴まれ、持ち上げられる。
そして俺は逆さ吊りになる。
ああ、もうお終いだ。
父さん母さん…お側へ参ります。
その人間たちは ポケットから袋を取り出すと俺をその中に入れた。
い、いやだ。死にたくない。
必死にもがくと 男は顔を顰めて 口に縄をかけ、足は縛りもう一度袋に入れた。
持って帰って〆るつもりか…
俺はその後檻に入れられ、売られることになった。
良かった。命は助かったのだ。一時的に…
人間たちがなにか話しているけどわからない。
恐らくどれにしようか迷ってるのだろう。
他にも色んな魔物がいる。
どれが美味しいかまよっているのか?それともペット…いやないな。
みんな牙を剥いてるし。
もうどうでもいいや。
この世界の人間は親を殺してその子を売る人間なんだな。
いや…元の世界も同じか。
改めて動物愛護法の大切さがわかった。
そんなこと言っている場合じゃないな。
これからどうしようか。
父さん母さん… 言葉は鳴き声しか聞こえないから話せなかったけど愛情が伝わってきたのに。
いっぱい魔物の肉もくれたし。
魔物に襲われた時も守ってくれた。その圧倒的な力で。
…
助けて…
そう願うことしか俺にはできなかった。