3話ー③ 昼の日常
「あっ! お帰りなさいアーサー!!」
クエストを終え迷宮門に戻ると満面の笑顔でカレンが出迎えてきた。
「ただいまカレン。 あれ? 今日はいつもより早めに戻ったのによくわかったね。」
「へぇ?! あぁ~そうですね~。 偶然たまたま今日はいつもより早めに戻ってくる気がしたんですよ~!」
ものすごい速さで目を左右に動かすカレンにアーサー以外の人物は何かを隠している事を明確に理解していた。
「そ、それよりも今日は先にギルドに向かって報酬をもらいに行きますよね?!」
「ん? 今日はこのまま帰るつもりだけど?」
「・・・・・へぇ?・・・・・」
何故かカレンの瞳に光が失う。
「? どうかした?」
「い、いえ??? 別になんでもありません・・・よ?」
流石にカレンが何かを隠している事に気が付いたのかアーサーは動揺しているカレンの顔に近づく。 その近づく事によってカレンは別の意味で動揺をして顔を真っ赤にした。
「なぁにを隠しているのかなぁ~??」
「べべ別に?? 何も隠してなんかいませんけど??」
「・・・・・・ふ~~ん・・・。」
「そ、それよりもなんで今日はギルドに行かないの? いつもなら早い時間に帰ってきたら必ずギルドに向かうのに。」
これ以上至近距離で顔を見ていると心臓が持たないと思ったカレンは2歩ほど後ろに下がり話題を変えた。
「今回のクエストはオーナーから請け負ったクエストだからね。 報酬はギルドではなく直接オーナーからもらう事になってるんだ。」
「オーナーが?」
オーナーは普段から具材調達や別のクエストを発注する際に必ずギルド経由でしか発注することはない。 理由としてはあまり冒険者とは深く関わりを持たないようにしている為だ。
何故冒険者が多く利用する食堂店を経営していて冒険者との関わりを嫌がるのかはカレンでさえ知らないが、つまりはそんなオーナーが冒険者であるアーサーに直接クエストを発注することはかなり珍しい事なのだ。
しかし、ここでカレンはある事に気が付く。
「つまり・・今日はこのまま食堂店に行く・・の?」
「? うん。 そのつもりだよ。 っていうかあの人そうそう外に出ないから行くしかないんだけど。」
それを聞いた瞬間、カレンはアーサーの手を掴んだ。
「テレポート!!」
「・・へ?」
その瞬間、カレンとアーサーはその場から姿を消した。
「・・・なぁおっさん。」
「ん?」
その一部始終を見ていたトーマスと迷宮門の門番所統括責任者である隊長が立っていた。
「あの2人、完全に俺達の事忘れるよな。」
「あぁ、そうだな。」
「しかもカレンちゃん。 今の魔法、完全に黒魔術だよな。」
「・・あぁ、そうだな。」
「あの2人って色々と隠す気あると思う?」
「・・・ノーコメントだ。」
すでに目の前にいない友人2人を思いながらトーマスと隊長は大きな溜息を吐いた。