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幼馴染の村娘(魔王)  作者: 黄田 望
8/10

3話ー② 昼の日常


 迷宮内下層2階。


 迷宮の中は天へと続く上層階と地へと続く下層階に分かれている。

 今現在で人が攻略した階層は上層で21階、下層で14階が最高攻略だ。 迷宮は存在を認識されてから未だに最高層まで到達した者は1人もいない。


 さらには階層が上がる事によって出現されるモンスターが強くなっていく。

 その為、迷宮門以外にも騎士達が階層に繋がる階段前毎に門番所が設けられ、定められたランクの冒険者でなければ通る事ができないのだ。


 「おーいアーサー! こっちにもあったぞ~!」

 「お~! 俺も見つけたー!」


 そして朝から迷宮内に入りギルドで発注されていたクエストをこなしている冒険者、アーサーとトーマスは現在、下層2階入り口付近で籠一杯に薬草をとっていた。


 「お? なんやかんやとしてたらいつの間にか昼の時間になってるな。 トーマス! そろそろ昼食の時間に「待ってましたぁああああ!!」――しようか・・。」


 籠に入れていた薬草など気にもしないでトーマスは籠を乱暴に持ちながら折角取った薬草をばらまきながらアーサーの元へかけていく。


 「おいトーマス。 お前折角取った薬草こぼれてますけど・・。」

 「え? わーかてるって! それよりも昼にしよう! カレンちゃんの愛・妻・弁当!!」

 「・・絶対に後で拾えよなまったく。」


 アーサーとトーマスは丁度いいくらいに座れる岩を見つけだして、そこで座って今朝カレンに作ってもらった弁当を食べる事にした。


 「~~~~~ッ!! うっま~い!! やっぱり女の子に手心込めて作ってもらった料理はおいしいぃなぁ~~!! なぁアーサー!!」

 「あぁ。 ホントいつも感謝してもしきれないよ。」


 作ってもらったおにぎりを2人はあっと言う間に食べ終えて満腹になったお腹をさする。


 「・・なぁアーサー。 お前さ。 そろそろカレンちゃんが魔王の後継者だって村の皆に言ってもいいんじゃないか?」

 「・・・なんだよ突然。」

 「いやだってさ? あんだけいい子だってもう村の皆全員が知ってるんだぜ? 料理はできる。 店の手伝いも出来る。 さらには洗濯に掃除、そして近所付き合いすべてが完璧! そんな娘が実は魔王の後継者ですって言われても誰も今更怖がったりビビったり遠ざけたりしないって。」

 「・・・・。」


 アーサーは昔からカレンが魔王の後継者である事をずっと村の人達に隠して今まで生きてきた。

 それがアーサーの中でどんな気持ちで決めた事なのか友人であるトーマスでも知らない。 しかし、トーマスからしていつも笑顔で暮らしている2人の姿を見ていると早く説明して気楽に暮らしてもいいと思っていた。


 「まぁ・・・そのうちな。」

 「はぁ~。 その内ですか。」


 そこでしばらく会話は途切れる。 門番所の近くと言ってもここな迷宮。

 いついかなる時にモンスターが出現するかわからないこの場所で気を許すことなどありはしない―――が。


 「・・・で? いつ告白するの?」

 「ブッ??!」


 突然振られた内容に水筒の水を飲もうとしたアーサーが口から水を吹き出しむせる。


 「なっ?! なっ?! なっ?!」

 「おいおいおいおい。 いい加減この話のネタに慣れてくれませんかね~。 男の照れ顔なんて見ても嬉しくないんで。」

 「じゃあしなくてもいいだろそんなネタ話!!」

 「いいやするね。 じゃないとお前はこれからもずっとカレンちゃんに告白もしないヘタレ野郎のままになっちまう。」

 「う、うるさいな!? お、俺には俺のタイミングってものがあってだな!!」

 「ほ~~~~~~~~~ん? アーサーのタイミング・・ねぇ~~~~~????」

 「な・・・なんだよその目は。」

 「いや? ・・・で? いつ告るの?」

 「しつこくね?!」


 いくら危険な迷宮内とは言え、年頃の少年2人が揃っているとどうしても年齢に応じた話や気持ちの緩さがでるものである。


 「それにその・・カレンは俺の事を異性として見てないと思うし・・。」


 (あれを見てそう思うお前の考えがわからん?!)「なんでそう思うんだ?」

 「だってさ! 毎日毎日体の健康に気遣った料理を振る舞い、毎朝起こしに来ては洗濯物を洗って帰れば畳まれ部屋の掃除も済んでる! そして時間が空けば必ず迷宮門の門番所で迎えに来るなんて完全に俺の事を弟か何かと思ってるじゃん!!」


 (あ~・・・そう解釈しちゃってるわけね・・。)


 確かに普段の生活を見ているとしっかり者のお姉さんが可愛い弟を世話している風に見えない事もない。

 だがしかし、あのカレンのデレ具合を見てもそんな事を言っているアーサーも別の意味で重症なのだと頭を抱える友人のトーマスなのである。


 「それに、俺にはまだやらないといけない事がある。 あの()()()()()()()()に起きた原因を突き詰めるまで、告白も村の皆にカレンの事を話すのもまだ出来ない。」

 「・・・。」


 10年前のあの日、それはアーサーとカレンが出会った日。

 その日に何があったのかトーマスは勿論知っている。

 しかし、トーマスはそんな昔の事など忘れて早く2人には幸せになってほしいという気持ちを今はそっと胸の奥にしまう事にした。


 (まぁ・・でも、カレンちゃんが魔王の後継者だって事は村の皆どころか都会の王様も知ってるんだけど、2人にはまだ言わなくてもいいか。)


 「何やってるんだよトーマス! そろそろ再開しないと日が暮れるぞ!」


 話を切り上げるように薬草が入った籠を背負ったアーサーは一足先にクエストを再開した。


 「はぁ~。 やれやれ。 それじゃ始めますか。」

 「あっ。 その前にお前はこぼした薬草を拾いあげろよ。」

 「・・・・。」


 昼食前に籠から溢した散乱した薬草を見て、トーマスはアーサーに土下座をして手伝ってもらったそうだ。

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