2話ー② 朝の日常
「なるほど。 理由は分かった。」
アーサーはベッドの上で自身の髪の毛が真っ黒に焦げてアフロになった経緯を、同じく黒焦げアフロとなっているパーティー仲間の青年と幼馴染のカレンに一通りの話を聞き終えた。
「「すいませんでした。」」
「いや、元々はカレンに起こしてもらっておきながら目覚める事がなかった俺が悪いんだし気にしてないんだけど。 一応注意はしておこうか。」
アーサーは首を左右に振りアフロになった髪の毛をいつもと同じ短髪ヘアーに戻す。
(( どうやってるんだろ。 ))
「さてと、まずはトーマス。 お前はもう少し落ち着いて部屋に入れないのかっていつも言ってるだろ。 元気がいいのは良い事だがあまり騒いだら他の部屋の人達がびっくりするだろ。」
「あははは・・わりぃ。」
トーマスと呼ばれるアーサーのパーティー仲間は黒焦げとなった部屋を見渡しながら謝る。
「そしてカレン。 前にも言ったけど無暗やたらに黒魔術を発動させちゃダメだって言ってるだろ? 今回はたまたま君の正体を知ってるトーマスだからよかったけどこれが別の俺の仲間だったら君が普通の村娘じゃなくて魔王である事がばれてしまう。」
「あぅ・・ごめんなさい。」
アーサーに注意されたことがかなり堪えたのかカレンは身体を縮めて頭を下に向ける。
「でも、さっきも言った通り起こしてもらっておいて起きなかった俺がそもそもの原因だしな。 作ってきてくれた朝食も、今は黒焦げになってるけどまた明日も作ってきてくれないか? 今度はちゃんと起きて頂くからさ。」
頭を下に向けていた状態のカレンの頭をアーサーは優しく撫でる。
「!! うん! もちろん!!」
頭を撫でてもらって嬉しさと朝食を楽しみにしてくれているという喜びの気持ちでカレンは今日一番になるであろう華やかな笑顔を振るまった。
その横には2人の空間から近くにいるはずなのに蚊帳の外にされているトーマスが羨ましそうな瞳でアーサーを睨みつけていた。
そんな状況の中、ドアからコンコンッとノックの音が聞こえる。
「あらあら。 今回もかなり元気な起こし方をしたのね~カレンちゃん。」
「!! 奥様!!」
アーサーの部屋に訪れたのはこの宿の主である女性でありカレンが世話になっている食堂店オーナーの奥さんだ。
「カレンちゃんがもし良ければ今日も朝食の準備を手伝ってもらえないかしら? 最近どうも腰辺りの痛みが酷くて高い所に置いてある調理器具を手にするのも一苦労で。」
「も、もちろんです! でもその前に部屋の掃除をしないと・・・」
「あぁ~大丈夫よ! 掃除ならアーサー君とトーマス君がしてくれるから!」
「「 へ? 」」
すると奥さんは床に座り込んでいるカレンを部屋から引っ張り出していった。
「あっ、そうそう。 アーサー君とトーマス君は部屋を綺麗に掃除するまではご飯はお預けだから早く終わらせておりてらっしゃいね~!」
戸惑いながらも奥さんに連れていかれるカレンの声が聞こえなくなるまで、アーサーとトーマスはしばらく真っ黒に焦げた悲惨な状態にある部屋を眺めて絶望していたとかなんとか・・・。