生と死
生あるものには必ず死が訪れると皆は言うけれど、僕は死が平等でない事を知っている。
金があったから名医に手術してもらえた。
金が無かったから手術を受けられずに死んだ。
地位が高いから優先されて助かった。
地位が低いから後回しにされて死んだ。
運が良かったから奇跡的に完治した。
運が悪かったから容態が急変して死んだ。
あゝ世界はなんと不平等なのか。
生あるものには死が訪れると皆は言ったけれど、僕はそれが嘘だと知っている。
死んだ筈の僕は生きている。
幽霊として生きている。
素通りしていく人々をただ眺めて生きている。
あゝ世界はなんと不確かなのか。
生あるものには死が訪れると皆が言うのなら、僕はそれを否定しよう。
生あるものは死に、死んだものは死後の世界で生きている。
生の後には死があり、死の後には生がある。
けれど僕の記憶はずっと繋がっているのだ。
肉体という箱から解き放たれて、僕は生きている。
ずっと生きている。
続く記憶を持っている。
それは果たして死と言えるのか。
形を変えて僕は今も生きている。
そしてその生は数百年経っても終わらない。
あゝ世界はなんと面白いのだろうか。
お読み頂き有難うございます。