目
今回すごく短いです。
時は少し遡る。
暗い森の中で、鈴は倒れていた。まだ目覚めていないのではなく何者かに襲われ、そこに倒れ伏していたのだ。咳き込みながら、少し上体を起こした鈴は相手を見つめた。背は高くもなく低くもなく。男性とも、女性ともとれる。顔はフードで隠されていてその表情を窺い知ることは出来ない。
「生駒・鈴ダナ。少々手荒ニナルガ、我慢シロ。」
声は機械音のような冷たい声だ。感情がこもっていないように聞こえるからか、その言葉は有無を言わせないものだった。
「だ、れだ?」
「答エル義理ハナイ。」
問答無用とそのフードの者は跳躍して鈴に近付く。鈴の目はその動きを捉えることは出来なかったが、直感的に後ろへ飛びのいた。
「“蔓草ノ呪縛”」
だが、魔法によって手足を植物に拘束された。植物達が鈴をきつく締めあげる。思わず、呻き声が漏れた。フードの人はゆっくりと鈴の前に立つ。
「オ前ノ力ノ半分ヲ預カラセテモラウ。器ハ……ソノ右目ダ。場所ハヒントヲヤロウ。セイゼイ死ナナイヨウニナ。」
そう言って鈴の前髪を払うと、右目に指をかけた。
「“簒奪者”」
自然にスルリと眼球が奪われた。瓶に目をいれると、今度は茶色い羊皮紙を出し、それを鈴のポケットに入れた。鈴を一瞥すると、何も言わず立ち去った。
しばらくして、植物の拘束が解けた鈴は地面に座り込んだ。目を奪われた怒りと、妹がそばにいない不安と、感じてはいけないものを感じた気がしたからだった。
虚空になってしまった右目からは一筋の赤い涙が流れ出ていた。
今日誕生日なんです。誰か祝ってほしいなぁ(チラ)明日更新出来ないかもしれないです。ごめんなさい