第72話 白と黒の剣舞
「やあああぁぁぁっ!」
リティイと呼ばれた双子の片割れに向けて剣を振るが、いとも簡単に避けられてしまう。
「情けない。それだけ?」
「いや、まさか!」
左手にもう1本剣を具現化させると素早く振り、間髪入れず右手の剣も突き出す。
覗き込むと照準を合わせ引き金を引く。
「よそ見はダメだよ」
「!」
とっさに体をひねると鋭い何かが顔の横を通り過ぎ、斬れた毛先が宙に舞う。
「もっともっと楽しませてくれないと」
「はあぁぁぁっ!」
突き出した剣の先が黒衣をかすりグライが微かに悲鳴を上げる。
「おい、アルマ! あわせろ!」
「……ん!」
トガの掛け声に合わせ2人は背中合わせになると同時にグライの方へ向いている腕を突き出す。
そして反対側の手に持った剣で挟み合わせるように斬りあげ、体当たりをかます。
「わわっ!」
「アラキア、撃ち抜け!」
正確に打ち出された光はバランスを崩したグライの二の腕を撃ち抜く。安堵したのもつかの間。
「アルマ!」
まるで瞬間移動したかのようにアルマの背後に現れたリティイにアラキアは叫ぶ。
「させるかっ! っ!」
一歩前に出たのはトガだった。
両手に持つ剣を交差させると振り下ろされた凶刃を受け止め、刹那。
背後から飛び出したアルマの刃が小さな影を貫く。
(……まるで)
互いの考えをよんでいるような連携だ。
パージを構えアラキアはその攻撃を見ていた。
戦っているうちに、というわけではなく最初の一撃からまるで長年組んでいるパートナー同士のように視線を交わすこともなく連携をとり戦っていた。
これが光騎士など一部の常軌を脱している人たちならまだ納得はいっただろう。しかしアルマはアラキア以外、できてアストレとしか連携をとることができない。チームを組むなどあり得ないのだ。
双子の身体が宙で一直線に重なった瞬間、引き金を引く。
無慈悲な攻撃は双子の足を貫き消える。
「双子、力の差は分かっただろう! ここから消え去れ。私の気が変わらぬうちにな!」
「そうもね」
「いかないんだよね」
「なにっ!」
見事な連携で満身創痍のはずの双子はそれでもなお笑う。
そして狙ったのはアルマだった。
「アルマああぁぁぁぁっ!」
「……!」
着地したばかりの彼女は振り返るのにせいいっぱいで防御などできない。その目が見開かれる。
アラキア自身、連射はできず、そしてトガは攻撃を受け止めた反動で立てていない。
刃はアルマの胸へと迫り。
――ガキン
硬質な物同士がぶつかった音がしたかと思うと、何かが飛来し刃を吹き飛ばす。
続いて飛んできたなにか丸い物体は双子を宙へ弾き飛ばした。
「な、なに?」
2つの飛来物は同じ方向、入り口の方からとんできた。
そして今、そちらの方向には2つの人影があった。
「よぉう! カイ様参上だぜ!」
「ご、ご無事ですか?」
まるでビーチボールのような不思議な球体を手に謎のポーズをとる白いクロークの日に焼けた男と、弓を手にした金髪碧眼の少女が立っていた。
「カイに、クレア!?」
「よう、アルマ! と、話はあとだ! 先にこいつらぶっ飛ばしてからにしようぜ!」
「微力ながらお手伝いします!」
部屋の奥に吹き飛ばされた双子は立ち上がると不満を隠そうともせず顔を歪める。
「なに?」
「なんなの?」
「新手?」
「救援?」
「でも関係ないよね」
「でも変わらないわよね」
「みんなまとめて食べちゃおうよ」
「みんなまとめて遊んであげましょ」
双子からは狂気ともいえる気配が漂ってくる。
「……お前たち……奴らの力は、私が抑える。全員で一斉に攻撃しろ」
「ん!」
「ああ」
「おうよ!」
「はい!」
返事をするとアルマは剣を振り上げる。
「……私の力、甘く見るなよ!」
トガは叫ぶと左手に書物を持ち右手を双子に向ける。宙に紡がれた光はやがて鎖となり双子を絡めとる。
「今だ!」
その声と共に地を蹴っていた。




