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第70話 呪われた者

 交差させた剣で鉄の大剣を受けとめる。

「アラキアっ!」

「任せろ!」

 刹那、輝く動力源を一筋の光が撃ち抜く。制御を失い崩れてゆく鉄の塊を避ける。

 今日は戦法を一新させ私が攻撃を受け止め敵の足止めをしている間にアラキアが的確に動力源を撃ち抜くという方法をとっている。狙いは正確で1撃でとはいかずとも、目立った傷を負うことなく撃破することが出来ている。

「……でさ、何かわかったことはある?」

「うーん……、様式が似ているってこと以外は何もないかな……」

 最奥の部屋に続く階段を登りながら今日の成果を話し合う。

 1つ1つ部屋を回り隅々まで探索したが、都市群エリアチーマヴィルを訪れたことがあるアラキアでもこれと言ってピンとくるものはなかったという。

「……残るはこの上の部屋だけか」

「うん……そう……だね」

 思った以上に階段がきつい。

 羽を広げると浮かび上がりアラキアの横を超低速で飛行する。

「相変わらず持久力はないね」

「しょ、しょうがないじゃん! 別に代用できるんだしいいんじゃ……」

「まあ、持久戦なんてアルマだとそうそうないか。と、敵性反応はなし。……でも、これと言ってめぼしいものもないかな。祭壇、だよな?」

 最奥の部屋に足を踏み入れ調査を始めるがこれまで通り特に何もない。

 と。

「アルマ―! ちょっと、こっちきて!」

 タストペリーを調べていたアラキアが声をあげる。

「なになに?」

 アラキアの横に着地すると、タストペリーを見てみるが先日と同じようにあの紋章が刺繍されている以外はなにもない。

「そうじゃないよ。この裏!」

 そう言いアラキアはタストペリーをめくりあげる。

 裏にあったのは人1人サイズの小さな扉だった。まるで第0番艦で見たあの扉と同じように紋章が扉に大きく刻印されている。

 材質は遺跡の壁や床とは違い木のようであったが、放置されていたにしては痛んでいる様子は全くない。

「……って、あれ?」

 アラキアは扉を開けようとするが押しても引いても横にスライドさせようとしても全く開く様子はない。ガタガタと音が鳴るだけだ。

 見た限り鍵穴はない。

「これってどこかに仕掛けがあるとか?」

「……ゲームじゃないんだから」

 そう言いつつも可能性がないわけではない。

 端末を取り出すと遺跡のマップを呼び出す。

 入り口にほど近い突き当りにバツ印が大きくついているが、それはこの前落ちた落とし穴だ。

(……特に変わったところはなし)

 試しに自分も開けてみよう、と扉に手を伸ばす。

「アルマ! 危ない!」

 緊迫したアラキアの叫びが聞こえ横から飛び込んできたアラキアごと床に叩きつけられる。

 耳で捕らえたのは何かが空を切るバシュッという音と、それが何かに突き刺さる重い音だった。

「……っ」

 扉に突き刺さっているのは剣のように見える。

 しかし、突起が少なくアレはまるで私が弓で打ち出すためにつくりだすような形状だ。明らかにクレアレアが込められておりあたっていたら怪我だけではすまなかっただろう。

「一体……」

 扉の反対側に目を向けると。

「お前は……!」

 黒衣に仮面。

「トガ……」

 トガは矢を射った姿勢のまま微動だにせずたたずんでいた。

 アラキアの無事を確認すると立ち上がり双氷剣を具現化させる。

「……触れるな」

「え……?」

「……扉に、触れるな」

 扉。それはさきほど触れようとしていたあの扉以外あり得ないだろう。と、なるとあの扉の向こうには《使徒》にとって都合の悪いものがあるということなのだろうか。

 問答無用で襲い掛かってきたインヴィディアは正直言って一番対応しやすい相手だった。

 しかしラストやトガなど真意の読めない相手ほど困るものはない。攻撃していいものなのか。

「アルマ、相手は《使徒》なんだろう?」

「でも……」

「……アルマが迷うのも分かるけどさ。僕も奴に助けられてる。……なあ、あんたトガだっけ? 扉に触れるなってどういうことなんだ?」

「……」

 トガはこちらに向けていた弓をおろすと具現化を解除する。

「……問おう。……アルマ、最近変わったことがあっただろう?」

「……あったと言ったら、どうする気?」

 変わったこと。それなら一番に当てはまるのはあの本だろう。

 総司令といい《使徒》といい、一体アレはなんだというのだ。

「どう答えたにせよ、私には分かっていることだからどうでもいいのだが。……貴様には、そこまでの覚悟があるのか?」

「どういうこと……?」

 マーテルが語ったのはあくまで分かりやすくするための例だと言われた。そもそも何1つ分かっていないのだ。覚悟も何もあったものではない。

 ただ、マーテルを信じるというのならば。

 そして何より大切なものを守る覚悟というのならば。

「……そう、だったな。貴様は頑固だった。……しかし、貴様をこれ以上進ませるわけにはいかない! ここで……今度こそ、死ね!」

 一足に距離を詰めてきたトガは右手に具現化させた剣を振り下ろす。それを剣で受け止める。

「どうしてさ! お前は、いつもいつも何言ってるのか分からない! それでボクが諦めるとでも!? ボクを諦めさせたいのなら、説得してみせろ、トガ!」

「貴様は知らない! 何も知らないから……」

「なら教えろ! ボクは理由を知らないまま引き下がるような人間じゃない!」

「……知ったところで、貴様は引き下がりはしないさ。そうすることで止められるのならば、もう、とっくにそうしている!」

「教えてもないのに、知ったようなことを! まだ、分からないだろ!?」

「いいや、分かりきっていることだ!」

「どうしてお前がボクの事を知っているんだよ!? ボクは、お前の事をほとんど知らないっていうのに!」

「……黙れッ!」

 互いに両手に剣を持ち全力で斬り合う。

 もはやアラキアの事も、周りの事を気にしている余裕はなかった。そして離れたところでパージを構えるアラキアもめぐるましく入れ替わる両者の立場に引き金を引けずにいた。

 両者はほぼ互角。

 少し前までなら、おされていたはずだ。

「お前は……なにを知っているんだ……!」

「……全てだ。だからこそ、断言できる。このまま進めば、貴様は貴様だけでなく……皆を殺すことになる。貴様は、全てを失う!」

「!?」

「貴様の持つ力のせいで、皆! ……クレアレアとは……イスクとは……いや、《使徒》とは、呪われた者達だ」

「……」

「……そう、だな」

 キン、という音と共に私の手から剣が弾き飛ばされのど元に奴の刃が付きつけられる。

「……教えてやろう。貴様の言う通り、……仮に、今ならまだ……間に合うと信じてみよう。お前が可能性と呼ぶものに価値があるのか、いや自分の判断が正しいのか思い知るといい。……それに、アラキアもいるのならば、あるいは」

 そう言うと武器を消し去り両手をあげる。

「……ここから先、お前たちが結論を出すまで手を出さないと約束しよう。信じるというのなら武器をしまえ。……信じない、というのならば何も語らずにすぐ立ち去ってやる」

 ヤツのあまりの態度の変わりようにしばらく唖然としていたが、側によって来たアラキアが銃をおろしたのを見て私も剣を手放す。

「……いいだろう。ついてこい」


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