第69話 ペア任務
「ダメ?……いや、絶対嫌だ!」
提示された内容に自分でも頬がひきつるのが分かる。
「大丈夫だよ、相手はほら」
アストレが指した先にいたのは。
「アラキア?」
「や、アルマ」
クレアレアを完全展開しているのか青い戦闘着のアラキアは右手をあげる。
「そうそう。アラキア君だよ。彼は都市群エリアの調査隊にも入ってたからさ。一緒に調査するには最適だって」
なるほど。そういうことならば。
そして彼ならば。
「わかった!」
それまでの事が嘘のように、私は笑顔で返事を返した。
先日の深森の遺跡エリアの調査はほとんど収穫がなかった。
しかし、それでも調査は続けられており次の日も調査に向かったのだが、うっかり落とし穴のトラップに引っかかりそのトラップの場所を発見した、という以外は何の収穫もなかった。落とし穴は通常出られないような深さだったが飛べる私には関係なかったと言える。
そして何の成果もないまま数日たった今日、総務部は私に都市群エリアへ行ったことのあるイスクとペアを組むという条件を出してきた。無論、すぐさま拒否したが総務部側もディアル総司令からの命令とあって引き下がってくれなかった。
そこにその命令のことを知ったアストレが駆けつけ調節してくれたというわけだ。
「……なるほど、やはりアラキアか」
ワンシップ乗り場前で待ち構えていたディアル総司令は口元だけが笑っていた。
「もっと時間がかかるかと思っていたが、まあいい。幸い時間はたっぷりある。……何か成果を期待しているよ」
「……はい、ディアル総司令。……行ってきます」
「そうそう、アルマ君。……君はよく第9番艦に出入りしていたね?」
「はい?」
「……実はある本を探していてね」
ディアルの人差し指が私のクロークを、胸のあたりを指さす。
「そう、まさにそんな感じの『白い表紙の本』でね」
「……っ!」
(あの本の事……!?)
マーテルから受け取ったあの本の存在は私とマーテルだけの秘密である。誰にもありかは教えていないと言っていた。
だが、まるで総司令のこの動作は、私が本を所持していることを知っているかのような。
「……図書館で、……白い表紙の本なんか見たことないですよ。題名はないんですか? 検索に引っかかるんじゃ」
「はて。……題名などあったかな?」
正面から見据えるその瞳に鳥肌が立つ。
アラキアの袖を握りしめる。
「ディアル総司令、私達そろそろ任務に行ってもよろしいですか? なるべく時間をかけて多くの場所を見てまわりたいので」
「ああ、そうだな、アラキア……。行きたまえ」
「行ってまいります」
背を向けた彼がつぶやいた言葉。
それははっきり聞こえていた。
「《使徒》になど出会わなければいいのだが」
「やけに機嫌がいいね、アルマ」
ワンシップ内でグライアオスを抱えていた私にアラキアは問いかける。
「だって、……アラキアと任務が一緒に出来るって考えたら、うれしいから、さ」
「ペアなら他の人でもなってくれるんじゃ?」
「ペアは嫌なの。……あのさ、ボク」
アラキアだから安心できる。彼だから。
アストレや結城とはまた違う安心感と心地よさがある。
そう言いたかったが言えなかった。
「ん?」
「……ううん、なんでもない。……なんというか……小説班の班長なら、考えてみてよ。ボクが何て言おうとしてたのか」
「僕だってエスパーじゃないんだから……って、超能力者か」
「……っふ」
自分でもどこがツボにはまったのか分からなかったが笑いが漏れる。
「な、アルマ……」
「やっぱりアラキアと話してると楽しいな。人と話すのは面倒なだけのはずなんだけど……」
「……」
「ねぇ、任務が終わったら行きたい場所があるんだけど一緒に来てくれないかな?」
「ん?いいよ」
そうして私達は惑星リエースへ降下した。




