第68話 深森の遺跡
「うーん!」
思いっきり伸びをして息を吸い込む。
初めて降り立った惑星リエース。その地に私は戻ってきていた。
あれから特に何も変化もなく指示された任務地、主に惑星ハーウィンでラークの殲滅任務を続けていたのだが、今日は違った。
朝食を食べ終えゲート広場へ向かうといつもとは違った内容の指令が出ていた。
惑星リエース、森林エリアにある調査不可能とされていた遺跡群。しかしつい先日、内部までつながっている通路を調査隊が発見したという。よって戦闘部による内部の調査が行われることになったのだ。
深森の遺跡エリアと名付けられたその遺跡内部のエリアは、白を基調につくられており水路も完備されている。人の手が加わっていないのが信じられないほど保存状態がよかった。
その理由は遺跡内部の至る所で見られるクレアレアを使用した機械仕掛けの人形が整備を行っているからだろう。しかし、整備するものがいるとすれば侵入者に対するものもあるわけであり。
「……う、わ……わ」
自分の身長の2倍近くある巨体が振り下ろした大剣を横に跳んで避ける。
魔導兵士と名付けられた大剣を振るう機械兵士である。他にも槌やメイスのように腕を打ち付けて攻撃してくる型やビーム攻撃をしてくる型、細身で防御力が低いかわりに素早い型、はたまた鈍足な代わりにやたら固い型など多くのタイプがあり3体以上同時に相手にしたくない。
軽く床が揺れ大剣がめり込んだ白い床が無残にひび割れる。
「……ひぃぃぃ……、と」
右手を魔導兵士に向けると軽く握りこぶしをつくり、そして強く握りしめる。
どの動きに同調するように魔導兵士の周りには氷の粒が現れ握りしめた瞬間、一気に凍り付く。そして勢いよく腕を横に凪ぐ。
パリンという小気味の良い音と共に氷は粉々に崩れ去り、破片が宙を舞う。
「いっちょ上がり!」
ヤツラは物理攻撃に強い代わり魔法や、弱点を直接狙った攻撃に弱い。
これらのことはここに来る前に分かっていた。
惑星ハーウィンの都市群エリアでも同じようなモノが報告されていたからだ。私自身は海岸エリアにしか行ったことはないが、資料にはちゃんと目を通している。
よって、最初に攻撃が通じないか試しに剣で斬ってみた以外は中距離から魔法を使って撃破している。
報告通りそちらの方が効率が良かったのだ。まだ試していないが剣に魔法の性質を付与させてみたらどうなるのか。と、考えてはいるが実行には移していない。
どちらもクレアレアの産物であることにかわりはないため出来ないということはないだろうが、まずは敵の攻撃を見極められるようになってからだ。
「……また、行き止まりか」
突き当りにあった部屋を開け中を一通り見てみるがめぼしいものはない。
この遺跡は当時は何か大掛かりな施設であったことは間違いない。
しかし見る部屋全て何も置いてなく、そして何の痕跡もない。ただ、広い広間になっているだけなのだ。
そして入り口から区画分けされているということが分かっている。
入り口から入ってすぐを第1区画、奥に行くほど数字を増やしていくとすれば、数字が小さいほど全体の面積が大きくそして比較的シンプルな作りであり、奥に行けば行くほど壁の装飾などが増えて行っている。
白いだけではなく所々に入れられた金色の模様はとても神秘的であり、大きな通路には水路の他に緑もある。照明は見当たらないがどこからか柔らかな光がさしているようで困ることはなかった。
「……この水も、一応サンプルを」
研究部に回し分析してもらうために要所要所でサンプルをとっている。腰に下げた小さな鞄から小瓶を取り出すと水路の水を中に入れ栓をする。
瓶の中で透明な水が光を受けて反射する。
「……」
と、そこに何か影がうつり込む。
ため息をつくと羽を広げ天井近くまで上昇。左手を前に出すと弓を具現化する。
(レイピア……レイピア……)
細長いモノを想像し右手を弦に添えると引く。
「……!」
パシュッという音を立てて放たれた『矢』は魔導兵士の動力源を撃ち抜き、ガラガラと音を立ててその場に崩れ落ちた。
クレアの問題を解決した際、身につけたこの技は近距離型の自分には合わないと思っていたが、意外と使える。そして魔導兵士は空を飛んでいる相手には無力なため安全圏から一方的に攻撃できるのだ。
これがゲームならスリルを求めて剣で接近戦を挑むところだが。
宙に浮かんだまま長い登り階段を登ってゆく。
突き当りにあったのは白い扉だった。今まで見てきたものとは違い大きく、更に装飾も凝っている。
引いてあけると、中は大きな部屋になっていた。
最奥には数段高くなった祭壇の様なものが見える。
その祭壇の両脇に下げられているタストペリーにはマーテルが『アトミアの紋章』と言っていたあの紋章が金糸で刺繍されている。
「……アトミアって……何なんだ」
祭壇に近づき細部を観察してみるがこれまで同様、特に変わった物はない。
続いてタストペリーも見てみるが何もなかった。
上を見上げると、遺跡の内部では珍しく窓が確認できた。天窓になっており、擦りガラスのため外に木や葉などがあるということが分かる程度だ。
(ここは、地下なのか……?)
地上から見えたのは確かに入り口部分だけであり、中に入るまでここまで広いとは思わなかった。
はじめに長い階段を下り、その後段々上へと上がってきたのだからそうなのだろう。
「うーん……」
総合的に考えてもめぼしいものはなし。
間取りや区分けなどそういった情報しか得られたものはない。
同じ魔導兵士が確認されている都市群エリアを見ていれば何か共通点が見つかったかもしれないが、それも資料だけしか見ておらず、どちらも白が基調であるということしか分からない。
ひとまず調査内容を報告しに帰還することにした。
「なんだとっ!? それは本当か!? 事実なのだな!?」
地球のとある施設の1室。そこで通信機越しに受けた報告に男は叫ぶ。
『はい。間違いありません』
「私は……何ということを……。このままでは大旅団が……」
――壊滅してしまう




