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第67話 警告


 想像を現実にする力。

 そんなものがあるというのならば、私は今までどれほど使いたいという出来事に出くわしてきただろうか。それでなくとも、人間という単位で考えるのであれば、多くの伝説やお伽噺、神話に不老不死という単語や魔法といったものは登場する。

 しかし。

「あ、れ……?」


――強く想像イメージしろ


 イスクがクレアレアを行使する際、最初に言われる言葉。

 それは、まさに想像。

「……」

「条件を追加しよう。……その力が大きな代償を必要とするならば?」

「代償……」

「……ああ。仮に、だ。……その力を使用者の力の上限、そして節理を超えて使用したとき……それは呪われた力となるとしたら?」

「……マーテル、どういうこと? ボクに何を伝えようとしているの?」

 背後の結晶の光でできた影に沈む彼女の瞳は、それでもなお強い光をたたえていて。

 敵と対峙している時とはまた違った恐怖が這い上がってくる。

「……ボクは」

 私なら。

「……質問が悪かった、か。……紫苑、貴方は……貴方にしかできないことがあるといったら、協力してくれるだろうか?」

「ボクにしか出来ないこと……?」

「ああ。……これも分かりやすくする例えだが、汚灰はいの根源を断つことが貴方しかできないとしたら、しかし、そこには大きな代償が必要ならば、貴方はどうする?」

「……」

 答えなくとも決まっている。

 しかし、それがその時になっても揺らがないという保証はない。

 私は、弱い。普段は1人ソロだというのに、いざというときには支えられてばかりで1人で決断を下すことはこわくてしょうがない。

「……ボクは……その代償が」

 言ってしまえば、道は定まる。妙なところが完璧主義者なのだから。

「……ボクだけにしかふりかからないものならば、その力、喜んで使おう」

「……っ!」

 私の答えが予想外だったのか、マーテルは目を見開く。

 やがてその瞳に大粒の涙が浮かぶ。

「……マーテル?」

 彼女は人工知能である。そう言って私は紹介されたのだ。

 感情を理解し表現できる。そうとも言われた。

 しかし、どういうことなのだ。

「その言葉、本当だな?」

「……ああ」

「貴方は私の事を不審に思っているだろう?貴方には、いつか……全ての真実を話そう。だから、その時まで私を信じてくれないか?お願いだ」

 深々と頭を下げたマーテルの瞳から涙が落ちる。 

 クレアレアで出来たそれらは空中で光となって消えてゆく。

「……」

 いきなり信じろと言われ、わかった、と言えるほど私はお人よしではない。

 むしろ人というものを警戒し関わらないようにしているほどなのだ。

 唯一心を許せる相手がいるとすれば、それは彼らだけ。大好きな彼と、そして私の事を理解してくれたあの人たちだけ。

 しかし。

「……わかった。信じるよ」

 何故だろうか。自然と口からその言葉が出る。

「……! ありがとう」

 そう言ってマーテルは部屋の奥を指さす。

「この奥に、まだ人が立ちいったことのない部屋がある。私の権限下で秘密裏に構成した部屋だ。……そこへ行ってほしい」

「……?」

「行けば、わかる。私が間違っていなかったのなら、きっと、導かれるだろうから」

「導かれる……?」

「……ああ。今はまだ、何も教えられない」

「……うーん」

 信じると言った以上、ここで引き返すような真似はできない。

 多少恐怖は有れどゆっくりと歩みを進めていき扉の前に立つ。

 入り口にあったのと似たような青色の両開きの扉だが、他と違う点と言えばその扉全体に大きく何かの文様が浮かんでいたことだった。どこかで見たことがある、と。

「あ」

 翼を模したようなこの紋章は惑星ドラクのコンソールのロックを解除したときに右手の甲に現れたものと同じだ。

 扉に右手を押し当てると、再びあの紋章が甲に現れる。

「……マーテル、これは……なんなの?」

「……『アトミアの紋章』……この先にある物を手にすることができることをあらわす印。……さあ、行くんだ。その時が来たら、私は全てを包み隠さず話そう」

「……」

「それと、これは警告だ。……道を踏み外すな。貴方の道を、どうか見失わないで。力の使い方を、間違えないように……」

 頷くと扉を押し開け中に入る。

 青い空間から一転してそこは白い空間だった。

 そして、中央にあるのは。

「……本?」

 両手で持ち上げるとかなり分厚い本だということが分かる。汚れ1つ無い白い表紙には何の文字も書いていない。

 これがマーテルが言っていたものなのだろうか。

 落とさないように胸の前で両手を使って抱える。と。

「!?」

 突然眩く発光した本は、次の瞬間光となって消えてしまう。

「え?」

 しかし光はクレアレアの結晶が消えた時のように宙に消え去るのではなく、私の身体――正確には私のクレアレア完全展開中であるためクレアレアの結晶体――に吸い込まれていったように見えた。

(……これで、いい)

 不思議とそれでいいのだという確信が芽生える。

(これがマーテルが言ってた、導かれるってこと?)

 起きた現象に驚きつつも踵を返し部屋を後にした。





「すまない。……私は……。どうか許してくれ。……私は……もう二度とあの悲劇を繰り返したりはしない。繰り返させない。絶対に。……私を、見守っていてくれ。……聖なる光のために」



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