第62話 魚人
白い砂浜に青い空。そして透き通った海。
どこぞのリゾート地かと思えるこの場所で響くのは楽しげな声。
ではなく。
「ふえぇぇっ!」
半泣きで全力で砂浜を駆け抜けるのは小さな騎士装のエルフ。
「こんなの魚じゃないっ!」
彼女の後ろをぞろぞろと続くのはぬめりとした肌の魚や貝の様な見た目をした生き物達。しかし魚というには陸上を歩行しているという点で大きく異なっている。
「ハイギョじゃないんだから……って、こっちくんなぁっ!」
手に持った剣が光をまとったかと思うと光の軌跡が描かれ魚たちが砂浜に倒れ伏す。
コンソールの情報から知的生命体の居住地であったという惑星ハーウィンへと降下指令が出たのだ。
汚灰によって汚染されている惑星であるからでもあるが、一番の理由はクレアレアがなんなのか、それを解明したいからだろう。
地球に汚灰が降り始めて見つかった魔法の様な力であるクレアレア。
確かに大旅団はクレアレアがあることを前提、そしてクレアレアの技術を中心につくられているが、扱える人と使えない人がいることや個人によって性質が若干異なること以外、何もわかっていないのだ。
汚灰と同様、クレアレアとは何なのか。
それを解明することも大旅団がつくられた理由なのだ。
そうして調査のために惑星ハーウィン、海岸エリアに降下したのはいいものの。
全く想像していたモノと違う生物が生息していたのだ。
先遣隊の情報から魚や貝など海や水辺を連想させる生物が生息し、出現するラークも水生生物系だと分かっていた。だからこそ、私は水中やあっても空中を泳ぐ魚を想像していたのだ。
だが、実際に遭遇したのは二足歩行する魚人と言える生物である。
あまりの突拍子の無さに一瞬パニックを起こしかけた。そしてそのぬめぬめとした肌を見ているうちに近づくのが嫌になってきたのだった。
武器の特性上、できても中距離攻撃であるため近づかないという選択肢はほぼない。仕方ないため大量に集めて一気に倒すことにした。
何故こちらに回されたかは単純だ。
調査隊は海の向こうにうっすらと見える古代人の居住地を調査しているらしいが、私が向かわされたのはこのエリア。
私の役目がトルムア、ラークの殲滅だからだろう。
自分でも調査に向いていないことは分かっている。
「……」
海、ということは塩水だというのは地球と変わらないらしい。
べたべたとして気持ち悪い。
『アルマさん、海中に敵性反応です』
「……また?」
ビルギットもあまりの敵の多さにうんざりしていたのだろう。声に覇気がない。
こうしてまたある程度集めては屠る作業が始まった。
「どうした、アルマ?」
「……」
いつもなら真っ先に食べ物を頬張るはずの彼女は今日のメインである大皿の上に箸を止めたまますでに数十秒固まっている。
まだ食べていないため何の竜田揚げなのかは分からないが、箸で摘んだところかなりふわふわでおいしそうだ。魚なのだろうか。
それなら尚更今日の彼女はおかしい。
魚は好物であるはずなのだが。
「どうかした?具合でも悪い?」
「……いや、違うんだけど」
「じゃあどうした?」
「……任務地で、魚が……魚……」
だんだんと声が小さくなり、箸が皿に当たって軽い音を立てる。
「おいしいよ?」
試しに食べてみると淡泊でふわふわとした食感、しかしうまみが濃縮されている。
「……おいしいけど?」
度重なるおいしい攻撃に屈したのだろう。そこからは早かった。
瞬く間に皿の上から夕食が消え去る。
「ナマズみたいでおいしかった!」
「は!?なまず!?」
「ナマズだよー……たぶん」
基本大旅団内で生産したものや冷凍されているものが提供されているというが、はたしてナマズは。
ふと、食糧の出所がきになった時だった。




