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第46話 嗤う灰


「つまんないわね。……私のかわいい子を簡単に倒してくれちゃって」

 施設の屋上。長く伸びた煙突の先に立った女性は不満げに呟く。

 スタイルの良い体は黒衣で覆われている。

「……まあいいわ。次見つけた時にはお姉さんが思う存分遊んであげる。……楽しみに待っててね、アルマちゃん」

 次の瞬間、その姿は闇の様な黒に包まれ消えていた。




「アルマー」

 図書館艇の奥、人気のない閲覧スペースに彼女はいた。

 深々と椅子に腰かけ本を読んでいる。

 戦闘部であるがために、睡眠時以外常に白のクロークを着ている。その姿に慣れるまでかなり時間がかかった。

 それでも利点もある。

 国ごとに支給された制服は違うため簡単にどこの国のイスクなのだか見分けがつくのだ。白地に赤は日本しかないうえに数人。ましてや背が小さいとなればほぼ確実に探し人に間違いないのだ。

 それにアルマの場合、クレアレアを完全展開した姿も白を基調にした騎士装だからなおわかりやすい。

 本人も制服が気に入っているらしく今のようにフードまで被っていることも珍しくはない。

「……アルマー?」

 フードの上から頭に手をのせるとそのまま隣に座る。

 ゆっくりを視線をあげた彼女は、なに、とでも言いたげに首を傾げる。

 主語が抜けていたりそもそも言葉を発しなかったりと、最初は戸惑ったがどうにか慣れつつある。それでもたまに何が言いたいのか分からないことはあるが。

「いや、そのさ、しばらく会えてないなーって思って。聞いたらここにいるっていうから」

「……!」

 何に驚いたのか彼女は目を見開く。

 そして一言。

「……珍しい」

「珍しい?」

「……ん」

「ああ、もしかして僕の方から探しに来ること?」

 大きく首を縦に振る。

「……そうかなぁ?」

「ん」

 もう一度頷くと彼女はフードを外す。

「あれ?」

「……なに?」

「いや、その、……アルマ、少し痩せた、というよりはやつれた?」

「!?」

「ああ、ごめんって!女の子相手にそんなこと聞いちゃダメ……だよねぇ?……ってアルマ?」

「……ボクやつれて見えるの?」

 白い手袋をはめた両手で頬を包み込んでアルマはふるふると小刻みに頭を振る。

「……やっぱり、アレ?」

「アレ……?」

「ううん、何でもないよ。……ああ、けど……太ったって言われるよりはマシだよ」




 白い空間にコツコツと足音が響く。

 扉の開閉音と共に舌打ちの音がする。

「……何の用だ?」

「あら、せっかくお姉ちゃんが来てあげたのにつれない子ね」

「私は貴様など呼んだ覚えはない。出ていけ」

 部屋の隅に置かれたソファに腰掛けた仮面の人物は忌々しげに来訪者を睨む。その右肩の上には白いオウムが乗っていた。

「ほんとつれない子。……こっぴどくやられたって聞いたから来たのに。大丈夫そうね」

「……かすり傷だ。……クレアレアでやられた分治癒は遅いが、もう問題ない。もういいだろう、インヴィディア。貴様はこの空間が嫌いなはずだろう?」

「ええ、そうね。大っ嫌いよ。……けれどもトガ、あなたがここにいるというのなら何度だって来てあげる。あなたは私のかわいい……なのだから。そう言えば、あのアルマって子、どうしてあなたはそこまで追いかけるのかしら?」

「……私の勝手だろう」

「使徒の本懐に関わることなのかしら?私が、あなたに惹かれるように……」

「……」

「また来るわね、トガ」

 背を向けた女性をトガと呼ばれた仮面の人物は呼び止め。

「……奴らに手を出すな。……奴らは、私の、獲物だ」

「ええ、分かってるわよ。けれども、私はたった1つだけどうしても気に入らないことがあるのよ。……それは私の勝手よね?」



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