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第37話 遠い彼方

「じゃあ、気を付けて」

 そう言ってゲート広場でアストレと別れたのはもう1時間も前だ。

 白いブーツで踏む草はちょうどくるぶしほどの丈でそろっているが、それは道のようになっている開けている部分のみで両脇はうっそうと茂った草木で覆われている。

 惑星リエースでも森林エリアヴァーホルツと名付けられたこの森林は熱帯雨林のようでもあり、よく見慣れた常緑樹の茂る日本の山のようでもありと不思議な森になっている。

 出現する敵対生物も森林に適した体をした猿のような生き物であったり虫のようであったりと地球の常識から見て妙だと思えるものにはまだ遭遇していない。もちろん、大きさなどは常識では考えられないものもいるのだが。

 比較的汚灰はいによる汚染が進んでいない惑星といえど、それでも地球より汚染が進んでいるためかもともと生息していた生物は全てトルムアとなり果てている。

 救う手立てがあるのなら救いたい。

 それが大旅団全体の意志でもある。

 だが、それは叶わないらしい。出会う生物すべてに対し研究部がつくりだした測定法でオペレーターが遠隔測定を行うが未だにクレアレアで浄化できる程度の軽度汚染の存在はいなかった。

 故に、出来ることはただ1つ。

 これ以上汚染が進み手に負えない存在になる前に彼らを止めることだけ。

 単刀直入に言えば殺すのだ。

 これはクレアレアでもイスクである人間にしかできない。

 不思議なことにトルムアも汚灰はいで出来ていると言われるラークと同様、倒した際に死体が残らずその場で汚灰はいに分解されるのだ。まき散らされた汚灰はいは近くにいる汚染対象に吸収される。

 汚灰はいに対する耐性があるイスクでなければ自殺行為といえよう。

 私も着陸地点からここまで歩いてくる中で何度かトルムアやラークの群と交戦したが、装着した簡易汚染度測定装置の値に大きな変化はない。オペレーターやアストレも何も言ってこないため大丈夫なのだろう。

 今日の任務は各自指定されたエリアの調査とトルムア、ラークの殲滅。環境に慣れるという意味合いも込めて比較的狭い範囲だ。

 森の中を歩いているとここが地球ではないということを忘れてしまいそうになる。きちんと道のようになっている部分が所々に残されているのも1つの理由なのだろう。

 この道は何者かによってつくられたものであって惑星中に張り巡らされており、奥部にある遺跡にもつながっている。知的生命体がいたという証拠であり、これをその道の研究者が知ったらどんな反応をするだろうか。

 昨日のカスト率いる先遣隊の調査で遺跡は朽ち果てており中に入るのは危険だと判断された。そのため、この惑星で得られるものは地球にはない自然資源とトルムアやラークとの交戦記録だけになりそうだ。

『アルマさん、前方に複数のトルムアの反応があります。注意してください』

「……ん」

 小さく返事を返して右手に持ったグライアオスを握り直す。

 警戒しながら進むと目に入ってきたのは猿の群れ。しかし、どこか異様だ。

『汚染濃度高。殲滅にうつってください』

「……了解」

 やはり、もうこの惑星の汚染は進みすぎているということか。

 地球も放っておけばこうなっていた。いや、なりつつある。

 その前に私達が汚灰はいの根源を断たなくてはいけない。

 私に気が付いたのか、猿たちが一斉にこちらを見る。

 ピテーと名付けられた彼らは1mほどの体長でもとからかなりの知性があったと思える。

 道具を使うのだ。正確には石や岩を投げつけてくる。

 遠くにいても攻撃されるというこの性質はPFOで嫌というほど味わっている。

 名前と姿が違うだけで同じ攻撃方法をもった敵を、何度も倒してきていた。そのおかげで初見でも落ち着いて対処ができた。

 岩を投げることばかりに気をとられるのか接近すると動きが鈍いのだ。

 そこを剣を一閃させる。

(……これは)

 視界に入るものは全て倒しつくした。それでも感じた敵意に本能的に上を見る。

 木にぶら下がり腕を使って振り子運動をしていたピテーがその力を利用してこちらに襲い掛かってきたのだ。この攻撃方法をみるのは初めてだった。

 それでも体は動く。

「……はあぁっ!」

 少し下がると襲い掛かってきたピテーに向かって走り剣を一閃させる。

 空中で分断された体は光に包まれ、次の瞬間爆散する。

 まるでゲームのような光景だ。

 しかし、実際に目の前にあるのは本物の命。違いは、そう、それだけ。

 それを理解しているかは分からない。

 いや、頭で理解していても理性が理解しているかは分からない。生き物を手にかけていることを認めるのは、今はまだ出来ていないのかもしれない。

 時々、考えていたことがあった。

 ゲーム内の敵が本当にいたら、私自身がその中の主人公なら奴らを簡単に倒せるのか、と。

 答えは、この光景を見ても出てこない。

 こんなことが現実になるとは思っていなかったあの日。

 そんなことを想い考えたあの地。

 どちらも遠い彼方の存在になってしまった。



ほんとは……ここまでが1章のはずだった……

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