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第27話 pvp

「……あの、さ」

「?」

 ほかほかと湯気をあげている紅茶のマグカップから目を話し顔をあげる。

 今日の訓練も終わり夕食まで時間があったため、大学内をうろうろしていたところを深川にお茶に誘われいつもの部屋に来ていた。今回は特に話すこともなく、本棚に置いてあった本を適当にあさり読んでいたのだが、それにも飽きて静かに紅茶を飲んでいた時のことだった。

「……なに?」

「あ、いや……」

「……?」

 普段の深川は言葉に詰まることがない。言いにくい事でもこちらが受け入れられるような言葉で言ってくれる。

「……」

「あ、そのね、……紫苑ちゃんはまだPFOを続けているのかなって思って。ああ、非難的な意味じゃないよ。ただ単にまだログインしているか知りたいだけで」

「……やってるよ」

 コールドスリープが始まってしばらくたち、ついこの間、約半分となる25回目が終わった。

 こんな状況でもPFOは稼働し続けていた。といってもアップデートやメンテナンスは行われていないが。

 サーバー自体は最後の最後まで稼働し続け、計画が無事終了したあかつきには元通り再開する予定だという。

「で?」

「そうか。1つお願いがあるんだけどいいかな?」

「……なに」

「僕とPvPをしてほしい」

「は?」

 確かにPFOではプレイヤー対プレイヤーの対決ができる。しかし行われることは稀でチーム内でドロップした超レア物をかけて行われたり、チーム間の領土合戦が膠着状態になった時のリーダー同士の最終決戦として行われたりとソロにはほぼ関係ないことなのだ。

 それでもやったことがないわけではないが、あれはしょうがなくだ。

 クエストの途中でいったダンジョンのボスが相当悪質なボスだったため、とあるチームがこれ以上進まないようにと注意喚起を行っていた。それだけならよかったがその先にプレイヤーに対する罠まで仕掛けてあり、その当時のスキルでは解除することが出来なかった。

 注意喚起とは体裁で、実際には通行の妨害だ。その当時実装されたばかりのダンジョンでボスからレア装備がドロップするという噂もあってのことだろうが。

 進むために交渉をしに行ったのだが、首を縦に振らなかったのでリーダーに一騎打ちを申し込んだのだ。もちろんかけた商品は罠の解除。

 システム上はPKさえできるが、一応はモラルというものがある。それにPKをした場合のメリットはこの場合なかった。

 引けないよう人の目のある広場で堂々と申し込んだのも功をせいし、勝ったのちに罠は全解除された。

 そんな風にあのゲーム内ではpvpはあまりいい印象はない。

「……どうして?」

 最近、アスタリアの妨害をした覚えはないし、ましてやアストレ個人とはフレンドでさえないのだ。それにプレーヤー相手にトラップを仕掛けるような悪趣味はない。

 考えられるとすれば所有している領土だが、あそこは木材系や果実系の戦闘にはあまり関係のない資源しかない、いわば景観や趣味重視のエリアだ。もちろん人気はなく今まで一度も狙われたことはない。

 確かにそういうソロに対してチームで領土を奪いにかかることはないとは言えない。そういう場合はモラルからしてpvpになる。

「領土が狙い?」

「いや、違うんだ」

「じゃあ何?」

 領土でないなら装備だろうか。

 それぐらいしか人から欲しいと言われるものはないはずだ。しかし、現在の装備は既に名を刻んである。つまりは私の専用装備となっている。入手したところで他人は装備できない。

「……」

「ただ単に、戦ってほしいだけなんだ。チームとしてではなく、個人で。ほら、僕は治癒術寄りとはいえイスクだろう?けれども今までゲーム内でも前線に出て闘ったことがないし、ましてや紫苑ちゃんたちのように現実で訓練を受けているわけじゃない。自分がどこまで動けるか知りたいんだ」

「……でも、PFOと実際のクレアレアの使用感は全然違うでしょ?PFOはゲームパッドを使っていて自分が実際に動いている感覚はないし」

「……それなら、大丈夫。あのVRの装置を用いてゲームに接続するからね」

 一度訓練で試用したあの装置を使う?

 しかし、あれは。

「……心配ないよ。結城さんには許可もとったし、セキュリティも前より格段に上がってる。……それに、もともとあの装置はPFO用に開発していたものだから」

「え?PFO用に?」

「そう、結城さんはPFO提供しているアールゲームスから依頼を受けてVRの研究をしていたみたいでね。将来的にはあれを一般に普及できるレベルにまでしたいらしいよ。……まあ、それのおかげであれからPFOに接続してプレイできる訳で」

「あうぅ……」

「そんな顔しなくても、外部のネットワークに接続しない模擬データなら紫苑ちゃんもいいって言ってたから。あとでね」

 そうとう顔に出ていたのか苦笑しながら深川は言った。

 これでまた夢に一歩技術が近づいたということではないか。

「それで、どうかな?してくれる?」

「……分かった、いいよ。……人気がなくってエネミーがポップしないところ……ボクのホームでどうかな?」

 さすがにアスタリアのホームに行く気にはなれないためそう提案すると深川は快諾してくれた。

 今夜ゲーム内で会うと約束すると、その場はいったんお開きになった。



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