第24話 睡眠は最大の欲求なり
「アルマ」
「……」
「アルマー?おーい?」
もしやと思い軽く額を突っついてみる。
「……むぬぅ」
(コイツ……)
寝てる。
そう確信したアラキアは肩をゆする。
「アルマー、起きろー」
「……んー、……あと5分」
「5分じゃない、もう着くってば」
「……んー?」
もぞもぞと動いたアルマは目をこすろうとして、なぜこんな邪魔なものを、といったように仮面を外す。
こいつはマイペースすぎるのか、図太いのか。
初回のコールドスリープが行われる会場に誘導人員として補助に行くのだが、その移動の最中、アルマは眠っていたらしい。
一番注目の的となるはずなのだが、それを分かっているのか分かっていないのか全く動じる気配もなく今の今まで隣でぐっすりと。
しかし、こいつが動揺していないのは分かっていない可能性が高いと見ていいだろう。慣れれば普通に見えるが、こいつのコミュニケーション能力は今までどう生きて来たのかと不思議になる部分もある。
結城や櫓木に初めて会った時もしばらくはアラキアの背後に半ば隠れた状態でいた。
「アルマ、おはよう?」
「おはよー、アラキアー……」
半ばフードに隠れてはいるがトロンとした瞳で見つめ返される。
まだ寝ぼけているらしい。
「ほらアルマ、準備しないと。着いちゃうよ?」
「うーん……」
「ほら、仮面着けて」
「うん……」
まだ眠いのか微動だにしないが、その姿は人形を彷彿とさせた。
仮面で一切表情の変化が見えないのもその要因の1つだろうか。
「起きてる?」
フードの上から軽く頭をぽすぽすとすると、不思議そうに首を傾げる。
「ほら、行くよ」
「……」
待機列から何度も視線を感じる。
逃げ出したい半分、自分に注がれている興味はどこに向かってのものなのかという興味半分。
特に何事もなく、ただ待機列を監視しているだけで済んでいるのは助かった。
これが受付だったり説明だったり、まだましだが誘導だったら人と直接話すということではないか。直前までは大丈夫だろうと思っていたがやはりダメらしい。
それにアラキアや結城など知った人間が周りにいないことも一因だろう。
『アルマ君、聞こえるかね?』
「……なんですか?」
冷たいなぁ、と呟く声がインカムから聞こえるがそれもそのはず。
今はそんな余裕はない。
『休憩に入ってくれ。もうすぐアラキア君がそちらに迎えに行くはずだ』
「……了解」
通信が切れるとほぼ同時にアラキアの姿を見つける。
かなり遠くにいてあちらはまだ気が付いていないが、こちらは強化された視力ではっきりと捉えることができる。
そちらに向けて足を踏み出すとこれまでより多くの視線が集まるが無視して歩いてゆく。
道中、会話を耳にするがほとんどが私を話題にしている。珍しいのか、なんなのか。
「アラキア」
「あ、アルマ。よかった、休憩だってさ」
「……うん」
「疲労困憊というところかね……」
深川の膝を枕にして眠るアルマは起きる気配がない。
「会場出た時にはぐったりしてましたし、一日訓練している以上に疲れてたんじゃないですかね?」
「やはり計画内でも突発的なチームへの組み入れは避けたほうがよさそうだな」
仮面も手袋も外すことなくフードも被ったまま眠っているということはそれだけ疲れていたのか横着なのか。
結城はしばらく考え事をしていたようだったが、ふと、後部座席に向かって声をかける。
「凪君、君も起きたまえ」
「ふぇ、……あ、おはようございます。……ってあれ、アルマは……って、また寝てる」
「皆、疲れているようでね。他のクレアレアはもちろん、挙句の果てに堅物に見える情報部員までこの状態だからな、今日はゆっくり休みたまえ。……では、私はこれで失礼するよ」
「あ、はい。……アールマー」
3列になっている最後尾、そこから身を乗り出してアラキアはアルマをゆする。
「起きろー」
「……むぅぅ」
言葉になっていない声をあげるがそれでも起きる気はないらしい。
「アルマぁ……、起きろー……。じゃないと、僕降りれないんだよー」
「あはは、確かに。ほら、紫苑ちゃん起きようか」
「うーん……」
「まぁ、こういうところが彼女らしさでもあるんだろうけど」
深川は半ばあきらめたように苦笑した。




