第22話 強制選択
「展開っ!」
両腕を前に突き出し防御壁を展開させる。
四方を防護壁で囲み対象者が逃亡するのを防ぐこと。それが主な仕事だ。
それ以外にも武力行使されれば本分である戦闘能力を生かして制圧する。もっとも、この方法は最終手段だが。
比較的話し合いで解決した事例も多かった。
最初の内は情報部や参謀部配属になる人とペアになってまだ意思決定の為されていない人を回って説得してまわった。それも後になるほど話し合いで解決する件数が少なくなってきていた。
そして、ついに大規模な抵抗が起きたというべきだろう。
情報部が得ていた情報を活用して事前に人を避難させていたからよかったものの、ここに一般人がいたら大惨事になっていただろう。
連日メディアでも騒がれており、何度も自分自身がうつっている映像や写真なども目にした。
「!」
光剣を抜くとそのまま斬りあげる。
飛んできたのはペットボトルなのだが、中にはなみなみと油が注がれており燃えている。
綺麗に分断され、燃える油が飛び散るが間髪を入れず反対の手を広げて小規模な防御壁を展開し防ぐ。
(確かに、これはクレアレアじゃないと危険かも)
「……指示を」
背後に立つこの場の責任者である警察官に指示を仰ぐ。この場では自分の身を守ること以外でクレアレアを使う際は責任者の指示が必要になる。
それが私にとっては性に合わないのだが、そう決められているのならば仕方がない。これがずっと続くわけでもないし、最終的には望む指示をくれる。
「制圧せよ」
「……了解」
「すっげぇ!」
缶酎ハイ片手に櫓木春は目を輝かせる。
その視線の先には大画面テレビ。そこには昼間の制圧のニュースが映し出されていた。
そこで大々的に取り上げられているのは警察や自衛隊よりも前に立つクレアレア達の事だった。
中でも最初に踏み込み次々と制圧していったクレアレア。特に自覚などなかったのだがかなり派手にやらかしていたらしい。どこから撮られていたのか何度も流れている。
どう言われようとかまわないのだが、ただ1つ。
何故、小学生だの中学生だの言われているのだろうか。
どこを見ても大学生、大人という推測はない。
それだけが不満だった。
「おわ、うふわっ、すげぇ!」
光剣を抜いたところになると春は傍らの机をバンバン叩きながら叫ぶ。この際缶の中身がどうなっているかは言及しないでおく。
「お?おっ!?うわ、すげぇ、なにこれ!あはははは!」
最早春が何を見ているのか確認する気力もなく、揺れても倒れず無事だった自分の飲み物に口をつける。
自分が一番目立ってしまうのは適正上仕方ないのだ。
元々PFO内でビーチバレーのプレイヤーだったカイは中距離系、あとの2人も遠距離である魔法職と、一応近距離に対応できるがそれでも中遠距離攻撃が主になる銃使いであるため、接近戦ができるのは私1人なのだ。
「お疲れさま……って、おや。櫓木君、ずいぶんと機嫌がいいようだな」
「だって、結城ぃ!ドカーンって。すっげぇじゃん!」
「そうか、それは……紫苑君、櫓木君は何本飲んでいたかね?」
「……さぁ?」
床には既に空になった缶が何本か散らばっている。私がこの部屋に来た時には缶を片手にしていたはずだ。
正確には覚えていないが、それからかなりのハイペースで飲み続けていた。
私も冷蔵庫に入っていた烏龍茶をもらっていたが大きすぎて飲みきれてはいない。
「春君、ほら、紫苑君に迷惑をかけてはいけないよ。君の酒癖の悪さはどうにかならないのかね?」
「酒癖ー?これが普通だもん。でしょ?」
「確かにあまり変わらないが、絡みが執拗なのだが?どうにかならんかね?」
「なんにゃぁぁいぃあははは」
結城はしがみついてきた春を慣れた手つきで担ぎ上げる。
「……全く、どうにかならんのかね。紫苑君、櫓木君の相手をしていて疲れただろう。昼間もご苦労だった。ゆっくり休みたまえ」
「別に最後の方は相手にしてなかったから大丈夫。……結城さんもちゃんと休んで」
「ああ、もちろんだ。明日からも大変だろう。おやすみ、紫苑君」
「おやすみなさい」




