第16話 ハッキング
「外部からハッキングだよ!」
「なんだと!?」
何も考えられなくなりかけるが、視界に入った装置の中の人影に息が詰まる。
「紫苑君……、そうだ、紫苑君がまだ装置にっ!」
キーボードに飛びつくがうんともすんとも反応しない。
あくまで通常使用での安全性が確保できているだけで、緊急時の動作は保証できていない。ましてや人為的な操作となるとどこから誤作動が起こることか。
世界最強規模のセキュリティを設置しているここがやられるとは。
「くっ……!出来ないかっ!」
接続時と同じように離脱時もあるい一定の手続きを踏む必要性がある。いきなり切断してしまっては後に悪影響が出かねないからだ。
しかしそれが出来ない今、こうするほかなかった。
「櫓木君、主電源を落としたまえ」
「は!?バッカじゃないの!?そんなことして大丈夫だと思ってるわけ!?」
「だが、このままではさらに危険だ。出来ることはそれくらいだろう。……君は、紫苑君の意識を出口のない牢獄に捕らえるつもりかっ!?否、彼女を死の危険にさらすつもりかね!?」
「うう……分かった。わかったよ」
ハルは渋々隅に着けられたボタンへ手を伸ばす。
「深川君、もしもに備えてはいるんだったな?」
「ええ、もちろん」
「……頼んだ」
「はい」
次の瞬間、照明ごと全ての電源が落ちる。
すぐに補助用の明かりがつくが、その前にはもう動き始めていた。
装置を手で開けると紫苑の肩を叩く。
「紫苑君!聞こえるかね!?」
「……」
目を閉じたまま反応しない彼女に最悪の事態が頭をよぎる。
ただ単に急な切り離しで反応できていないだけという可能性もあるが、最悪、高負荷がかかって脳にダメージがいっている可能性もある。
念のためとっていた心電図などには異常はないようだから生きているとは言える。
「紫苑君!」
「結城さん、失礼します」
横から入ってきた深川が手際よく診察を始めるのを見てひとまずはその場から離れる。
「……櫓木君、元は辿れたかね?」
「全然ダメ。主電源を切った後、補助電源がつくまでに完璧にやられちゃったみたい。あ、少なくとも日本国内からじゃないみたいだよ」
「日本国内でない……?」
「うん。でもそれだとしても妙なんだよね。ま、その辺のは情報部だとかに任せるとしてさ、どうだった?」
ついたての向うから現れた深川に向かって不安そうにきく。精一杯普段通りに振る舞っているのだろうが、その表情にいつもの突き抜けた明るさはなかった。
「ああ、とりあえずは大丈夫なようです。切断前に内部で衝撃を受けたようで、所謂気を失っている状態かと。詳しくは分からないので、すぐに搬送して検査しますけれどね」
「よかった……。ではすぐに手配しよう。櫓木君は出来うる限りのデータ復旧を頼む。あとは他3人のクレアレア達に待機命令を伝えてほしい」
「わかった!」
「あと、このことを彼に伝えておいてくれ」




