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第13話 夢に見た技術

「……は?」

 こんなこと言われて聞き返さない方がおかしいだろう。

 いきなり自分が作ろうと思っていた技術が目の前に現れたら。


 クレアレアの最終調節も終わり、一時帰宅まで残り2日ほどになった今日、結城は戦闘部配属になる4人を呼び出しこう告げた。

「今日からはVR技術を使ってトルムアやラークを模したデータと戦闘訓練を行ってもらう」

 それもヘッドマウントディスプレイだのグローブだのを使ったシステムならばまだ理解はできただろう。世間一般に普及していて且つそのような技術を学んでいた私が認知しているのはそのようなVR技術なのだから。

 だが違った。

 電脳空間サイバースペース。ライトノベルや小説でよく出てくるVRMMORPGなどのVR。

 VRなどという技術など知らない幼いころから夢見続けて、大学に入ってまで追いかけ続けた技術が目の前にある、と言われたら。しかもそれが一般レベルでなくとも実用可能だといわれ、使えるとしたら。

 確かに自分が実現させたかった、実現に関わりたかったというのは事実だがそれ以上に好奇心が勝るというものだろう。

「まさに想像通りの仮想空間さ。いや、何も私は訓練のために使おうというだけで何も企んではいないよ?」

 例えば、デスゲームだとか。と、言った結城は楽しげな笑みを浮かべていた。

 その笑みを見て、そう言えばこの人も生粋のゲーマーだったということを思い出した。

 チーム無限騎士団インフィニートナイツのチームマスターだと言っていたような。陣地合戦ではなくどちらかといえばダンジョン攻略に重点を置いたチームだったはずだ。規模もそこそこある。

 この男も自らがゲームの世界に入り込むことを夢見た1人だったのだろう。そして、それを実現させるだけの技術と知恵を持ち合わせていた。

「と、言ってもまだ大掛かりなシステムが必要でね。この装置に入ってもらって接続を行うことになる」

 研究棟の地下、それもメインサーバーの近くに人1人が容易に入れる大きさの球体の機器が4つ並んでいる。

 結城曰く研究中だった技術をここ1か月でどうにか仕上げたものらしく形状のきれいさや採算、生産性などは全く無視しているという。その言葉通り機器自体は相当武骨な見た目だ。

 加えて多くのコードが伸びていて踏まないように歩くのはかなり難しい。

「安全性は確立されているから、そこは安心したまえ。念のためにモニターしながら運用できるようにはしてあるからな」

「……これも、機密事項なんだよね」

「もちろんだ、アルマ君。ここで起きたことは全て機密事項。計画も何もまだ外に漏れては混乱が起こるだろうからな。……あくまで表向きは大学でも講義再にむけての少人数による試行、だ」

「分かってる」

 コードを踏まないように気を付けて装置に近づくと中に入る。

 寝ているような座っているような不思議な姿勢になるが以外に居心地は悪くない。むしろフィットしてとてもいい。

 と、近づいてきた深川が他3人と私の間にボードを移動させた。

「……?」

「ほら、電極はったりだとか少し、ね?」

「ああ、そっか」

 あまり気にしない事なのだが配慮は配慮なのだろう。女子1人というのは何かと面倒だ。

 そうこうしている間に男子側は既に訓練に入ってしまったのだろう。様子をうかがっていたらしい結城が満足げな顔をして確認と説明にくる。

「実は君だけ特殊なものでね。向こう3人はチームで訓練を行い、実際もチームを組んで動いてもらう予定だが、君の場合は組まない方がいいだろうと判断した」

「……協調性がないから?」

「はは、まあ、悪く言えばそうだがよく言えばそれだけの力があるということだ。危険もその分増すだろうが、それ故に失敗はこの訓練で味わっておいてほしい。本番は失敗など出来ないのだからね。では、頑張ってくれたまえ」

 結城が蓋を閉めスイッチを押す。

 だんだん感覚が消え、次に元通りになった時、立っていたのは森の中だった。


 ゆっくりと動いてみると景色の見え方などに若干の違和感はあるもののこれが仮想空間だとは思えない。ヘッドマウントディスプレイなどを使ってみる空間とは大きく異なり、現実とほぼ相違はないと言っていい。

 何か機器をつけている感覚もないため、ほぼ完璧に再現していると言っていい。

 それでも細かい部分を見れば容易に区別はつくが、それでもすごい技術だ。

『聞こえるかね、アルマ君』

 無線を通してきく音声のようにすこしノイズがかった結城の声がどこからともなく聞こえてくる。

「……聞こえてるよ、結城さん」

『それはよかった。異常はないかね?』

「大丈夫。……で、どうすればいいの?」

『まず最初に1体ラークを出現させる。それを今まで行ってきた対人のクレアレアの訓練と同様、クレアレアを展開し撃破してほしい。感覚としてはほぼ変わらないはずだ。しかし、これまでは感情や思考を持った人だったがラークは人ほどの感情など持ってはいない。怯むことやラーク同士連携をとることはあれど、圧倒的な実力差を見せたところで奴らが退くことはないと思っておいてもらいたい』

「わかった」

『それに奴らはどこからともなく現れ、更には群れで動く習性があることが分かっている。最初の試しを終えた後はそれらの習性を再現したフィールドを探索という形で歩き、特定の地点を目指す訓練を行う。任務では専属のオペレーターがつくことになるが、その役は今回私がこなそう』

 かなり実際の任務に近い形での訓練になるということか。

 むしろ人を相手にするときよりも楽かもしれない。手加減なく挑めるのだから。

『それともう1つ、大事なことを忘れていた。現実に近い、ということは感覚も近づける必要がある。当然、痛みを感じることを忘れないでもらいたい』

「……分かってる」

 対人での訓練でも何度か攻撃をもろにくらうことはあった。しかし、それはクレアレアを展開していればほぼ問題がない程度の衝撃に過ぎなかった。

 結城曰く、それくらいで済んでいるのは彼らより私のクレアレアを扱う能力が上だからだという。レベルが高いプレイヤーが低いエネミーから攻撃を受けてもダメージが通らないのと同じ原理だと。

 なら、私に合わせて作られたこの訓練プログラムでは同等かそれ以上の力を持ったエネミーということになる。

「大丈夫だよ、ボク、こう見えても痛みには強くてね。……ううん、やられる前に倒しちゃうから」

 右手の中に剣が現れる。《氷双剣》グライオスの内の片割れ、《蒼氷》グライアオス。青みがかった刀身からその名が来ているのだろう。

『では、始めるぞ。3、2、1……』

 目の前に出現した小さな人影のようなラーク、通称インズ。剣先を奴に向けると走り出した。



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