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第11話 ソロの遊び方

 ハルの話でだいぶ時間をつぶしてしまったようで、外に出ると既に日は沈んでいた。

 それでも歩くのには全く問題ない程度の明かりはある。

 それに、大きな違いは外でありながら汚灰はいが降っていないことがあげられるだろう。

 都心から離れた場所にある大学でそこそこの敷地もある大学は設備が整っていることもあって汚灰はいの研究を行う施設になっていた。

 それ以上に重要な事はクレアレアの訓練施設としての機能を備えているということだ。

 それ故にクレアレアの安定した供給ができる。

 敷地の四隅に立つ光の柱。そこから敷地を覆うように光の膜が出来ている。それで汚灰はいを防いでいるという。最も、クレアレア以外の目には光の柱も膜も見えないそうだが。

「……お腹すいた」

 いつもならバッグを置いてから食堂に行く。

 それがルート的に出来る位置に与えられた部屋はあるのだが、少々遠回りになる。だが、あまりの腹のすきように直行することを決めた。



「今日も食べているな」

 目の前の席に焼肉が大量に盛られた皿とサラダとお椀が乗った盆が置かれる。

 落ち着き払った声ですぐに誰だか分かる。

 とりあえず今箸で摘んでいるものを口に入れ飲み込んでから顔をあげ対面に座った相手を見た。

「結城さんの方が食べてるんじゃないの?」

「私は一度に全て持ってくるから多く見えるだけだな。君の場合は持ってくる回数が多いだろう?今盛られているのは何回目だ?」

「……数えてない」

「それもそうか。で、今日は好物は出たかね?」

「……アジの竜田揚げ」

 そうとだけ答えてまた食べるのを再開する。

 バイキング形式で食べれるため自分の好きなものを好きなだけ食べれる。日替わりのため好物が出るかは完全に運だが、品数は多く最低でも1品は好物がでると思っておいて大丈夫だ。

 それにおいしい。

 食べるときは食べる。それをモットーにしているため、後に動く必要がない夕食はとにかく食べまくる。朝も動き始めるまでに時間があるため食べる。

 そんなことをしていたら同じ時間帯に食べる人達から大食い認定されてしまったのだ。

 朝と夜を食べてる代わりに昼はそこまで食べれないのだが、そんなことは関係ないらしい。

 ふと、横の椅子がひかれる音がして顔をあげる。

「んー、ん?」

「よぉ、アルマ」

 こちらも荷物を置かず直接来たのか、白衣姿のアラキアがよぉ、と手をあげる。

 現在は汚灰はいが生物に及ぼす影響を調べているらしい。それと同時にクレアレアによる汚灰はいの浄化作用についても。

 本来ならば作戦などを考える参謀の所属になるらしいが、今は手が足りていない研究の手伝いにまわっているという。

「結城さん、お久しぶりです」

「ああ、アラキア君だったか?」

「はい、六合凪くになぎです。もしかして邪魔しちゃいましたか?」

「いや、むしろ私の方が邪魔になってしまっていたかもしれないな。普段、君達は2人で食べているようだからね」

「え、あ、いや。別に邪魔というわけでは。僕の方こそ2人が何か大事な話をしているのかと思っていたのですが」

 そんなことはない、と否定をして結城は山盛りの夕食に手を付ける。

 凪も食べ始めたのをみてデザートに手を付ける。

 一見白くてコーヒーゼリーには見えないのだが、口に入れるとなるほど、苦みが少なくむしろ牛乳の味がして子どもっぽい味覚でも食べやすいコーヒーゼリーだ。

 一通り食べ終わると新しい大皿をとっておいしいと思えたものをおかわりすることにした。

 アジの竜田揚げはもちろん、エビチリ、ほうれん草のバターソテー、先ほどのコーヒーゼリーにリンゴゼリーも追加。何回目のおかわりかは覚えていないがまだいける。

 甘いものは嫌いだが、気まぐれにみたらし団子を1つだけとると席に戻る。

「まだ食うか」

「夜は食べるよ」

「それでいて部屋に戻ってからも食べるからなぁ」

「……お腹すくし。アラキアだって食べるじゃん」

 部屋が隣同士で特に親しい相手もいなければ話す相手もいない。共通の趣味があるという点でも暇な時間は共に過ごすことが多い。夜はほぼ毎日どちらかの部屋で寝る直前まで共に過ごしている。

 そこで何かをつまみながらゲームをしたり作業したり、特に何かあるわけでもなく。

 こんな状況でもPFOのサーバーは通常運転をしているらしく多くの人がログインしている。むしろ、この状況だから家から出れなくて人がいるともいえるのかもしれない。

 基本、機密を漏らさないためにネット接続は禁止されているのだが、そもそも相手がいないため容易にネット接続の申請は通った。それがPFOユーザーの1人としては救いだった。

 PFOは言ってしまえばチームによる陣地取り合戦型のゲームだ。資源を獲得してチームの勢力を拡大して新たな陣地を得る。

 時には陣地を巡ってチームごとの抗争になることも稀ではない。

 力があるチームは資源の集まる地域で自陣を広げながら他チームの陣地を侵略して獲得陣地を増やす。そうやって強力な武器や防具の材料を集めたり、チームのホームを発展させていっているのだ。

 それは一般的な遊び方だ。

 しかし、ソロの遊び方は違う。

 1人だけのチームを立ち上げ、決して侵略されない初期陣地を『人気の少ない場所』に設置する。

 人気のない陣地というのは比例するように資源も少ない。仮にあったとしても使い道が乏しい物ばかりの場合が多い。

 それを狙っているのだ。

 獲得するために必要な労力が少ないため初期状態でも多くの陣地を無理なく掌握することができる。ただし、それは資源を獲得するための陣地ではなくあくまでおまけ要素だ。

 自陣の内部ではエネミーは出ない。それを利用して遊び要素を極める人もいれば、凡庸性は少ないがその1つの資源スキルを極めて大規模チームと取引をして報酬を得る人もいる。

 それとは別に、単にその場所を気に入った、というソロもいるが。

 初期こそ厳しいが一度自分の戦力となるものを得てしまえばそのあとはどんどん加速して成長してゆく。チームを組んでいる場合と違って、得たものをすべて自分の糧に出来るのはソロの特権だ。

 最終的な力量差を見てもソロの方が突出することがあり、陣地戦で傭兵として報酬を得ることが多くのソロが行きつく先だ。

 私もたまにそうやって報酬を得ていたが、だいたいは高難易度ダンジョンを探索していた。

 珍しいタイプだったのだろう。

 ほとんど人と関わらず自由気ままに過ごすソロプレイヤー。大規模チームと関わった方が利益があるはずなのに、その理論を覆すソロ。何かあだ名で呼ばれていたようだが、そんなものは覚えていない。

「そうだ、アルマ君」

「ん?」

 今日はどこのダンジョンにしよう、と思考を巡らせていたが名を呼ばれて顔をあげる。

「明日辺りにでも医療部に顔を出しておいてほしい。定期診断だ」

「あ、うん。わかった」

 クレアレアとしてのチェックか。

 3日に1回の割合で義務づけられている。といっても、この施設内にいる戦闘対応レベルのクレアレアは4人。それくらいの頻度でやっても医療部としての業務には何の支障もない。施設内での衛生管理や健康管理、時には研究部などと共同で汚灰おはいの研究も行っているようだ。

 まだ仮だが『計画』内で機能する部署分けは出来ている。

 主にあの悦明を受け承諾した人たちだ。あの場に集まったのはほんの一部で世界中から集められているらしい。

 まだ一般に知らされていないが、各国の政府も裏では計画に向けて動いている。

 世界規模の計画に巻き込まれているという状況の実感はないが、聞いた説明は突拍子もないものなのだから、そうでもしないと実行に移せないことは分かってはいるのだが。

 それにしても結城たち研究者は面白いことを考える。

 まさか思ってもいなかった。


 宇宙に行くことになるとは。



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