プロローグ
どうも、ナハァトと申します。
この話は最初にエルフやドワーフとかをロボットに乗せたいなぁという思いから考えました。
一応、今の所3部構成で考えております。
よければ、お付き合い下さい。
では、どうぞ~。
ガキィンッ――キィン――キィッン―――
荒れ果て、荒廃した大地の上で、遠近法の間違い等ではない巨大な2人の人が、大地にその大きさを証明するような巨大な影を落とし、その手に持つ武器で互いに相手を殺そうと争っている。
その2人の姿は両方共、全身鎧を身に纏っていた。
片方は、黒の全身鎧であり、その手には剣を持ち、その刀身は赤黒く光っていた。
片方は、紫の全身鎧であり、その手には剣を持ち、その刀身は青白く光っていた。
赤黒く光る剣と青白く光る剣の剣撃は苛烈さを増していき、互いが互いを斬り伏せようと縦横無尽に動き、相手の隙を見つけては剣を突き出すが、互いに動きが読めているのか、致命的な一撃を相手に与える事が出来ずにいる。
それでも、互いに手を休める事は無く、争いは続いていく――
キュイ――キュイイ――
時折、黒と紫、両方の全身鎧からは、苦しそうな音色の駆動音が鳴り響く―――
◇
異世界「アーク」
この世界は元々1つの大きな大陸だけがあり、そこは資源も豊富で、空気も澄み、森林も多く、緑豊かな大地が広がっていた。
何より魔物と呼ばれる邪なる存在も、魔王と呼ばれる異形も既に伝説上の存在として寝物語として語られるだけである。
だが、だからといって戦いが無くなり、皆平和に暮らしているかと言われれば……決してそんな事は無い。
最も数が多く、最も弱い種族 『人族』
強き者を尊ぶ、人ならざる者達の種族 『獣人族』
森を愛し、森と共に生きる種族 『エルフ』
何よりも鍛造と酒を好む種族 『ドワーフ』
最も数が少なく、最も強い種族 『魔族』
この5つの種族が互いに自分達の種族が世界の支配者であると謳い、その事を証明するかのように争いを繰り返し、終わりの見えない戦いは激化の一途を辿り続け、世界はその戦いの全てを受け入れられないようになった。豊富だった資源は枯渇し、空気は淀み、森林草木は枯れ果て、大地はひび割れ、崩壊寸前にまで及ぶ。
『魔法』に特化しているエルフ、魔族が最も勢いがあり、広範囲大規模魔法の行使等によって、世界の支配者として君臨するのはエルフか魔族のどちらかであると思われた。
この世界において、『魔法』は世界樹が大気中に散布する『魔素』と、自らの体に宿る『魔力』を混ぜる事によって発動するのだが、世界崩壊寸前にまで及ぶ度重なる戦いの影響で、遂に世界樹はその生涯を終え、枯れ果てる。
その影響で世界からは『魔法』と呼称される超常の現象は消えてなくなり、戦闘手段の中で大部分を占めていた部分が無くなった事で戦いは終わるかと思われたが、それでも五種族は戦いを止めない。
魔法が使えないのなら己の肉体を酷使するのみと、今度は身体能力に優れた獣人族と、頑強な体を持つドワーフが勢いを盛り返した。
そんな中、人族は魔法にも肉体にも優れておらず、ただただその数を減らしていく。
終わりの見えない戦いは続き、世界が崩壊するのではないかと思われた、その時―――世界を救う『救世主』が現れた。
その者は純白のような白い髪をたなびかせ、眼鏡をかけてはいるが、その奥に見え隠れする彫刻のような綺麗に整った顔立ちに大胆不敵な笑みを浮かべ、この世界の誰も想像つかないような卓越した頭脳をもって最初に人族をその傘下に治めると、次々と他種族を自分の傘下へと降らせ、瞬く間に世界の頂点へと登りつめた――異世界の女性科学者である。
実質、世界の支配者となり、原初の女王と呼ばれる様になった彼女の元、種族間の戦いは無くなり、文明レベルが急激に上がり、世界は再生の道へと進む――
再生の道を進み、数百年の月日が流れ、大地に力が戻り、緑の木々が戻る頃、先の戦乱の影響で世界の大地は7つに分割された大陸へと変化した。
人族が住まう 『アース』
獣人族が住まう 『グラスランド』
エルフが住まう 『フォレスト』
ドワーフが住まう 『ストーン』
魔族が住まう 『プレス』
魔族以外の富裕者達が住まう 『パラダイス』
この6つの大陸が円を描く様に存在し、その中心には
元は世界樹があった、今なお枯れ果てた大陸 『エデン』
この7つの大陸へと変化し、それぞれの大陸にはその地を統治する女王が存在している。
「アース」を支配する
『ラナディール・アース・ヘブンリー』
「グラスランド」を支配する
『ラナディール・グラスランド・ヘブンリー』
「フォレスト」を支配する
『ラナディール・フォレスト・ヘブンリー』
「ストーン」を支配する
『ラナディール・ストーン・ヘブンリー』
「プレス」を支配する
『ラナディール・プレス・ヘブンリー』
「パラダイス」を支配する
『ラナディール・パラダイス・ヘブンリー』
「エデン」を支配する
『ラナディール・エデン・ヘブンリー』
実質、この7人の統治によって世界に未だ争いは無い。
この7人は名前で分かる通り全員同じ姿をしている。
純白のような白い髪に、彫刻のような整った顔立ち、その背には翼が生えて、手には天使の羽根を冠する杖を持っており、違う部分をあげるとするなら、それぞれの瞳の色が違う事とミドルネームがそれぞれの統治する大陸を示しており、感情表現の起伏が 違うぐらいだけであった。
全員が同じ姿をしているのには理由がある。
この時には既に、世界に原初の女王の姿は無く、この7人はその女王が造り出した人工生命体であったためだ。
世界はこの7人によって永遠の平和を手にしたと思われたのだが、例え数百年の月日が流れようとも人々の心の中に宿る、他種族への憎しみが消える事はなかった。
その行き場の無い小さな歪みは少しずつ大きくなり、女王達も無視できない事へとなっていく。
再び戦争が起こる事を危惧した女王達は行き場の無い思いを発散させる場として、今後続く事となる催しを開催した。
『種族間代理戦争』
と、銘打たれた催しは中心の大陸「エデン」で開催され、各大陸から5人の代表者を選出し、総当たり戦で戦い、勝利大陸を決めるというものだった。もちろん褒賞もあり、勝利大陸は次回開催までの間、大陸間の貿易等何かと優遇されるという特典も用意された。
この催しで世界に住まう全種族達は、しばらくの間は一時の鬱憤を晴らし、他種族への思いを忘れる事が出来ていたのだが、誤魔化しで心の歪みが正される事は無く、いつしか女王達ですらその歪みに囚われていき、自分の統治する大陸こそがこの世界を支配する大陸であると思う様に変わっていく……
当初、種族間代理戦争と銘打たれていたものは『種族間戦争』と名を変え、内に燻ぶる不満を発散させる事だけが目的であったはずが、代表者同士の命を賭けたやり取りへと変わり、現在は女王達主導の自分達が楽しむためだけの娯楽の面が強くなった。
対戦相手の命を奪う事すら当たり前に行われるように変わり、そしてそのまま自分達が居る大陸の順位が自分達の中での優劣を決める場として用いられるようになる―――
◇
原初の女王がこの世界に与えた影響の中で最大の功績と言われる事が2つある。
1つは、この世界の文明レベルを急激に押し上げ、魔法無しでも人々の暮らしを豊かにした事。
もう1つは、魔法が無くなったこの世界の新たな戦闘手段として『HRWW』の基礎設計を残した事である。
戦争用人型兵器『HRWW』
正式名称― humanoid robot a weapon for war ―と呼ばれるこの兵器は、他にも様々な兵器を生み出した原初の女王が、この世界で新たに造り出した魔力金属を要に基礎設計され、7人の女王達の手によって完成した、全高およそ7m程の巨大な人型で、全身鎧を身に纏ったような外見であり、現在では種族間戦争でのみ使用されている兵器である。
この兵器は、7人の女王達の力の象徴にも用いられた。
何故なら、この「HRWW」は二種構造で、外殻フレームと内殻フレームの2つに分かれており、要となっている魔力金属と内殻フレームは女王達のみにしか製造方法は知らされておらず、女王達の力無くしては造り上げる事も出来ないようにしているからである。
7人の女王達だけが用意出来る「魔力金属」と「内殻フレーム」――
魔力金属とはその名の通り、中に魔力を宿した金属であり、軽くて丈夫、魔力を発散、溜めこむ事も出来る。
この世界の進んだ文明レベルを維持していく上で、無くてはならない物質であった。
また、中に溜めこむ魔力量も質量が増える事によって加速度的に増えていき、この世界にある様々な物に使用されている。
その性質を利用して動かされている物の1つがHRWWであり、外装や内部、動力源等、全てに使われて、搭乗者の魔力を一定量吸収する事によって稼働するよう設計されていた。
内殻フレームはHRWWの根幹で、その形は人型である以上、人の骨格のような形の構造である。
内殻フレームの基本性能、規格は全て共通で、胸の中央に当たる部分には操縦者が搭乗するコクピットが設置されていた。
コクピットは操縦者の魔力供給用のチューブが取り付けられている固い座席に、衝撃で姿勢を崩さないように操縦者の体を座席へと固定するようにシートベルトが用意され、両脇に操縦桿が付いており、足元には動作、姿勢制御のためのペダル、座席の周りには様々な装置、前方には外の状況が映し出されるモニターと簡易的なレーダーが施されている。
この内殻フレームはどこか一大陸が過剰に持たないように、7人の女王達それぞれが一部分を造り、全員が揃って初めて組み上げる事が出来るような仕組みが取られていた。
また、戦争使用後には全てのHRWWを破棄するよう徹底されている。
そして外殻フレームは、各大陸へと女王達から与えられた5機の内殻フレームにそれぞれの特色を考慮した上で、身に纏わせる全身鎧の事である。
このそれぞれの特色が施された外殻フレーム、全身鎧を装着させた姿こそが戦争用人型兵器『HRWW』であり、毎度、種族間戦争でのみ用いられている兵器であった。
そして、HRWWが最大の功績と呼ばれる最大の要因は、原初の女王がこれにのみ用いた技術であり、乗れば『魔法』が発動出来るという事であった。
正確にはHRWWの携帯している武具のほとんどは、原初の女王が同じように設計、もしくは製造した物であり、それを用いた場合に限り、魔法が発動出来るようになっている。
銃型兵装からは炎や氷、土の弾丸が飛び出したり、剣や槍型の兵装からはその切っ先が燃えたり風の刃を纏ったり等の現象を起こす事が出来たのだ。
ただ現在、原初の女王が製造した武具はほんの一部であり、ほとんどの武具は七人の女王達がそれぞれ自大陸の代表者用に新たに造り出されている。
当初、種族間戦争は生身の人対人であり、やはり肉体的に強い獣人族、ドワーフが優勢であったのだがHRWWが完成するやいなや、女王達は即座に戦争に採用し、HRWW対HRWWの戦いへと変化した。
その結果、獣人族、ドワーフのほぼ一方的な勝利ではなくなり、全種族が同じスタートラインに立った事で、今までの劣勢を覆そうと更に激化した戦いに女王達は大いに喜んだ。
だが、女王達も馬鹿ではない。
別にこの世界を滅ぼそうとは思っていない、ただ、自分の統治する大陸の種族こそが一番であると証明し、優位に立ち、楽しく生きたいだけだ。
最早、娯楽の一つである。
だからこそHRWWはこの種族間戦争にだけ用いられる兵器であり、戦争以外では使用出来ないように、女王達七人全員の命令で即座に全停止するようにセキュリティが施されていた。
また、HRWWを使用するようになってからの種族間戦争の勝利条件は、決められた時間―戦闘開始から12時間―以内に相手国側のHRWWを全機破壊か、相手国側の降参宣言のみであり、敗北条件はその逆である。時間経過の場合は引き分けへと定められた。
そして、女王様達が自分達の興が削がれないようにするために、HRWWでの戦闘行為以外で代表者達が死んだ場合は、無条件でその大陸が次回開催まで勝利大陸と同等の扱いをされる事になっており、それを実行した国は無条件で迫害される事を定め、自分達もそれに含み、余計な手出しをさせないようにした。
そして『第49回種族間戦争』の幕が上がる――
ファンタジー色のロボット設定です。
動き重視でそうしました。