第1章 侵食の矛先~老舗農家令嬢の裏の顔(2)~
『相模市の死体遺棄事件の秋川容疑者は、何と桜花女子大学卒の令嬢だった!!』
これは、事件発覚の翌週に発売されたと或る週刊誌の中に掲載されていた、ゴシップ記事の見出しである。
地元の住民は勿論のこと、このセンセーショナルな記事の内容に、世間の耳目は注がれ、時にテレビのワイドショーでも取り上げられるにまで至っていた。
そして、その中で明らかになって行ったのは、残忍な事件との接点とはあまりにもギャップがあり過ぎる美咲の表と裏の顔だった。
「実家は、地元はおろか、県内でも5本指に入るほどの豪農の長女」
「大学時代は放送研究会に所属し、卒業後はアナウンサーになることを夢見ていた」
「今年の春に行われた中学校の同窓会で、同級生との婚約を発表していた」
他にも、高級外車を乗り回したり、都内の繁華街で高級ブランド品を買い漁っていたと言ったような情報が載っていたと言うのだが、金銭に困っての犯行ではないし、何と、今年の秋頃には挙式の予定があった報じられているだけに、どうしてこんなことになったのか、謎を深める者は多かったと言う。
しかし、そんな幸せの絶頂の裏で、美咲は令嬢以前・・・と言うよりも、人間としての資質さえも疑われかねないとんでもない問題を隠し持っていたのであった・・・。