最終章 ~侵食の後の爪痕(6)~
「ほら見ろ。俺が言っていたことは、嘘じゃないだろ?」
思わぬ近所のおばさんからの援軍に、智博は尚も勝ち誇ったように、美咲を嘲笑っていた。
「そもそも、親の七光りだけで、地域の上に君臨しようだなんて、10年早ぇんだよ!!それに、お前のせいで、どれ程までにここの茶のブランドイメージが傷付いたのか分かってんのかよ!!ったく、親は親でいつまでも専務の座に居座り続けようとするしよ・・・。一体誰が、お前みたいな犯罪者を受け入れると思ってんのかよ!!全く、よくのこのこと帰って来れたもんだよな!!」
尚も続く、智博の暴言の数々に耐えかねたのか・・・、
「分かったわよ!!もう、帰って来るもんか!!こんな所!!」
そう言って、美咲は泣きながら、その場を走り去って行った。
「ごめんな。こんな見苦しいところを見せちゃって。」
「ううん、いいのいいの。それより、痛かったでしょ?」
売り言葉に買い言葉の数々となったバトルを起こしたことに、智博は気まずさを感じていたが、咲希は笑顔で気遣っていた。
「ありがとう。咲希も少しは気が済んだか?」
「うん。お陰でスッキリしたわ!!」
漸く、積年の恨みを晴らすことが出来た咲希の顔は、いつも以上に晴れやかな感じにも見えた。
「じゃ、一段落済んだところで、仕事再開としようか!!」
「はい!!」
こうして、美咲の落ちぶれた姿をよそに、2人はいつもと変わらない日々の生活に戻ったのだった。
その後、美咲がどんな人生を送っているのかは、誰も知らない。しかし、父の教えを守り通した上で、地道に頑張った成果が、事業の成功と私生活の充実と言う形で実を結んだことに、智博はこの上ない喜びを感じていた。そして、これからも地域1番のお茶屋さんであり続ける為にも、弛まぬ成長を心に誓い、今日も農作業に精を出すのであった・・・。 (完)




