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第1章 侵食の矛先~老舗農家令嬢の裏の顔(1)~
突然降って湧いたように明るみになった、美咲の逮捕。それと共に、報道は日に日に加熱し、智博の周りにも苛立ちを感じる者達が増えつつあった。
「全く、やんなっちゃうねぇ。殺人事件と聞いただけでも物騒なのに・・・。」
「これじゃ、この街のお茶農家の評判も、ガタ落ちになっちまうよ!!」
事実、今回の事件による風評被害を本気で危ぶむ声が上がり始めているのだ。
と同時に、智博も通常の農作業に加え、翔太の家業の信頼回復行脚も加わっていたのだ。可愛い後輩の為だとは言え、まだ経験の浅い部類の智博は、時に父親と同伴で関係先を回ることさえあったのだと言う。
そして、一向に止む気配のない、マスコミの取材攻勢。なかなかお茶作りに専念させてもらえない智博の心には、モヤモヤとイライラが募るばかりであった。
「あぁ・・・、何で俺がこんなことにいちいち答えなきゃいけねぇんだ!!いくら、あの女と同級生だからって、近所だからって、何か知ってるとは限らねぇだろうよ!!」
だが、日が経つに連れて、誰もが驚愕するような美咲の裏の顔が徐々に暴かれて行くのであった・・・。