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最終章 ~侵食の後の爪痕(5)~
「痛い!!何するのよ!!」
「バ~カ!!あんたが先にやってきたんでしょ?」
これまでに味わった辛い思いが一気に蘇って来たのか、咲希はそれ以上に力を込めて、美咲の頬に強い平手打ちを1発お見舞いしたのだった。
「何だい、何だい、昼間っからやかましいわね・・・。」
すると、それを聞いて、例の近所のおばさんが割り込んで来た。そして、その輪の中に美咲の姿があることを知ると、こう言った。
「残念だけど、あなたの両親は2年ほど前に、離婚してここを出て行ったわよ。経営していた会社が潰れちゃって、財産も全部裁判所に差し押さえられて、競売に掛けられていたところを伊藤君が落札して、新居を建てたと言うわけ。幾ら、悪い男に騙されたとは言え、あんなことをしたんじゃ、同情することなんて出来やしないね!!」
呆然として立ち尽くす美咲に、おばさんは最後にこう言った。
「ま、あの家はあんたが潰したようなもんだから、一生反省するんだね!!思った以上に、悪い娘でがっかりしたよ。ホントに・・・。」
とどめとも言える一言に、美咲はその場に崩れ落ち、再び号泣していた・・・。