第5章 侵食の終焉~2つの秋川家に訪れた明暗(10)~
激動の逆プロポーズから数日後、智博は咲希の両親への挨拶をすべく、咲希の実家へと足を運んだ。
兄の翔太によれば、時々ながらも、咲希の父親は娘に厳しい姿勢を見せることもある為、智博は終始緊張気味だった。しかし、結婚を決意したことを告げた時の反応は、あまりに意外過ぎる物であった。
「伊藤君。こちらこそ、咲希を宜しく頼む!!君は、うちの店のみならず、娘をも救ってくれた恩人だ!!」
そして、咲希の父は尚も続けた。
「君は凄く真面目で誠実だし、おまけにお茶への情熱も只者じゃないくらい、一生懸命なのを私は知っている。だから、絶対に咲希を幸せにしてくれると、私は信じている!!だから、絶対に反対はしない!!むしろ、君に将来を託したいくらいだ!!」
「ありがとうございます!!」
更に、咲希の母親も・・・、
「伊藤君、これからも咲希を宜しくお願いしますね!!咲希、優しい人で良かったわね!!」
と2人の仲を大いに祝福していたのであった。
そして、その年の10月、智博と咲希は晴れて夫婦となり、市内のホテルで披露宴が執り行われた。
「伊藤さん、絶対に咲希を幸せにして下さいね!!」
「そうですよ!!もし、浮気なんかしたら、私たちも絶対許さないですからね!!」
宴の後、智博は咲希の専門学校時代の友達に釘を刺されていたが・・・、
「分かってるよ!!絶対に幸せにするから、大丈夫!!」
と笑いながらも、気丈に答えた。
そしてそして、咲希の兄・翔太も、
「先輩、憎いことしてくれるじゃないっすか!!でも、良かったっすね!!咲希も、本当に心から喜んでるし。」
「ありがとう。お前も早く幸せになれよ!!」
と少し嫉妬心を抱きながらも、祝福の言葉を口にしながら、今や幸せの絶頂にまで上り詰めた妹の晴れ姿を両親と共に、感激の眼差しで見つめ続けていた・・・。




