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第5章 侵食の終焉~2つの秋川家に訪れた明暗(9)~
こうして、1つの野望が叶った智博だったが、それと同時に、咲希との恋愛も滞りなく、順風満帆の様子だった。勿論、幾度かの喧嘩はあったものの、それでも仲をこじらすまでには至らず、お互いに理解と愛情を深めつつあった。
そして、交際開始から1年少し経った時、まさかの展開が起こった。
「智博さん、私達そろそろ・・・、結婚しない?」
そう、咲希の口から逆プロポーズの言葉が飛び出したのである!!
「うん・・・、でも、俺なんかでいいの?」
智博は嬉しい半面、いきなりの愛の言葉に戸惑い気味だったが、咲希はこう続けた。
「いい!!これから運命を共にするなら、智博さんしかいない!!そう思ったの!!」
咲希の気持ちに迷いは無かった。
「咲希ちゃん・・・。」
「ううん、これからは私のことを『咲希』って呼んでいいから!!お願い!!」
「じゃあ、咲希。俺のことも『智くん』って呼んでくれる?」
「うん!!智くん、結婚しよう!!」
智博は無言で頷き、咲希をギュッと抱き締めた。そして、顔を赤らめて喜ぶ咲希の目からは、感激の涙が頬を伝っていた・・・。