第5章 侵食の終焉~2つの秋川家に訪れた明暗(7)~
それは、更に年が明けた、1月の或る日のことだった。農作業を終え、家で寛いでいた智博の元に、翔太が大急ぎでやって来た。
「先輩!!ちょっと見て下さいよ!!これを。」
それは、企業の信用調査を行う会社のWEBページだったのだが、そこにはこんな記載がされていた!!
「創業130年の老舗製茶販売業・秋川農産が、破産開始決定を受け倒産」
そう。予てから経営の悪化が際立っていた美咲の実家の家業は、とうとう万策尽きてしまったのである!!
これまで綴られてきた、緑茶・生花の著しい販売不振に加え、昨年の秋頃には景気が不況の方に転じたこともあり、頼みの綱であった不動産部門も土地価格の下落で損害が生じ、資金繰りが完全に立ち行かなくなっていたのだった。
そして、今月の初頭になって2度の不渡りを出したことにより、銀行から取引停止の処分を言い渡され、遂には、地方裁判所に自己破産を申請するにまで至ったのだと言う。
つまり秋川家は、マクロ経済にさえ、見離されてしまったと言うことなのだ!!
しかしながら、それも無理はなかろう。まだ先代の組合長の時はほぼ無傷だった売り上げも、現職になった途端、その時の2割にまで落ち込んでしまっていたのだし、倒産の1か月前には、最早金策に駆けずり回るのが精一杯なくらい、経営が逼迫していたのだから・・・。